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短編小説
1
「うをっ?! ななな何やってんだぁっ?!」



 藤堂は野太い声を裏返して悲鳴をあげた。



 信じられん。いや、信じたくない。

 ここはとあるマンションの廊下。ここの管理人たる自分の職場でもある。

 今は平日の真昼間。梅雨の晴れ間の爽やかな日差しが手摺越に燦々と差し込んで来ていて、とても明るい。



 そんな状況なのに、自分の股間に男の顔が埋まっている。

 ツナギのファスナーは一番下まで下ろされてしまっていて、派手な柄のトランクスが見えてしまっているその股間に、若い男が唇を寄せている。



「何って、ナニをしゃぶろうかと思ってる」

「言うなーーー!!」

「……自分から聞いてきたくせに」



 藤堂の股間に顔を埋めたまま、若造はブツブツとそんなことを言っている。その口調は無愛想だけれど飄々としていて、いつもの彼と変わりがない。

 里見翔一。それがこいつの名前だ。

 このマンションの住人で、現在二浪中の予備校生である。どの大学を目指しているのかは知らない。

 いつ会ってもボンヤリとしているし、髪は少々長すぎてボサボサ。だからパッと見はいささか冴えない感じなのだが、よく見るとその顔立ちは今時の若者らしく端整だ。

 だから藤堂は一度、髪をもっと短くしたらどうだと言ったことがあるのだが、それに対する翔一のこたえは「メンドウ」の一言だった。なんとも無気力な若者だとその時は思ったものだ。



 そんなヌボーッとした男が、急に何をとち狂ったのか、藤堂のツナギのファスナーを全開にしてきた。

 一体、何がどうなっているのかさっぱり理解できない。



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あきゅろす。
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