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短編小説
3
「そうそう。危険といえば、『ハートブレイカー事件』の話は聞いているかい?」



 医師の問い掛けに、カルナは頷いた。

 『ハートブレイカー事件』とは、ここ首都カープールで起きている連続殺人事件のことだ。二週間で三件。被害者は鋭利な刃物で首などを一突きされて絶命。そして全員、死後心臓を繰りぬかれていることから『ハートブレイカー』の異名をつけられたのだ。抉られた心臓は、遺体の傍に捨てられている。これの意味するところは不明だ。



「三名の被害者たちには共通するものがなく、悪質極まりない通り魔殺人事件だと聞いている」

「そうそう。だが、カルナくん。被害者には共通点があるんだよ。全員、二十代から三十代にかけての男性だということだ」

「共通点というには、少し漠然としすぎていると思うが」

「まあね。しかし健康で力のある若い男を襲うとなると、それなりにリスクが高くなるだろう。犯人はどうしてわざわざそういう人間をターゲットにしたのかな?」

「偶然、犯人と行き会ってしまったとは考えられないか?」

「その可能性もあるね」



 あっさりと頷いたヴォロンテだが、ふとその太い眉根を寄せる。



「気をつけたまえよ。君もターゲットの基準内だからな、カルナくん。私は少々とうが立ちすぎているからまだ安心だがね」





* * * *





 カルナはここ数日、屋敷には戻らずカープール中心街のフラットで寝起きしている。フラットメイトは置かず、一人きりだ。

 背中の傷に封印を刻まれて以降、シオンが現れることはない。だからあの屋敷で夜を迎えても、蛇に凌辱されることはないのだ。



 だが、別の責め苦がカルナを待っている。

 それは夢だ。



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あきゅろす。
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