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短編小説
1
 久々の闇だった。

 一筋の光もない、真の闇だ。

 自分の身体にしっとりと馴染む暗黒の褥に身を委ね、シオン・ラグナルは半ば目を閉じていた。



 人間が想像している以上に、異界は穏やかで静寂に包まれている。

 闇に息づきそこに棲息している魔物たちのほとんどは、長い寿命の間中暇を持て余す。

 力のあるものは人間界へと這い出し、暇を紛らわすことができる。

 シオンもその中に含まれる。



 およそ百年前、とある土地の領主の魂を触媒にして人間界に己の道を拓いた。

 そして己の血を撒き、自分の領土を創った。

 その領土とシオンの身体は繋がっている。だから人間界に現れることなど造作もない。あのエクソシストが刻んだ封印などわずかな枷にもなりはしない。

 だがシオンは動かない。

 静寂に包まれ、薄く笑ったまま。





* * * *





 アルマン・ヴォロンテは精力的な男だった。

 突如として姿を消し、連絡も取れない状況だったかと思えば、急に自分から連絡を取ってきてこうしてカルナの目の前にいる。



「カープールでまともな食事がとれるのは、やはりここだけだな」



 パークサイド・ストリートにある中華料理店で豪快に料理をかきこみ、ヘーレルなまりでそう言って笑っているのがヴォロンテだ。



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あきゅろす。
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