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短編小説
2
 そこは、本来はただの排泄口だ。排泄物を出すことはあっても、そこから体内に異物を受け入れることはほとんどないはずだ。

 そのはずなのに、今そこはパクパクと異物を求めて蠢いている。目には見えなくとも、赤く色づき腫れ上がって刺激を欲しがっていることが嫌というほど感じられる。



―――あいつの…せいだ…!



 脂汗が滲むせいでずり落ちるメガネを何度も押し上げて、頬の熱を感じながら佳克は内心で部下の一人を罵った。

 自分の席から二個分離れた左斜めの机に、問題の男がいる。

 素晴らしい速さで自分のノートパソコンに数値を打ち込んでいる、端整な顔立ちをした若者にして佳克の部下。それが瀬尾拓也(せおたくや)だ。

 瀬尾は涼しい顔をして、ずっとパソコンに向き合っている。チラともこちらを見ない。それが癪に障る。

 佳克がここまで追い詰められているのは、この男のせいなのに。



 今日の昼間、佳克は瀬尾に抱かれた。

 いや、昼間だけではない。朝もだ。

 瀬尾の綺麗な指で性器を扱かれ、無様に射精した。しかも、朝は電車の中で昼は会社の外階段で。



―――最悪だ。



 断固たる態度でキッパリと拒絶し、不埒な平社員を叱責すべき立場のはず。それなのに自分はあられもなく乱れ、よがりながら官能に身を任せてしまった。

 ―――そして、今でもその甘い毒のような感覚に震えている。



 昼休みの終わりに、瀬尾は佳克の尻の狭間に指を突きたてた。どこかに持っていたローションに濡らした指は奥に潜む蕾を容易に暴き出した。そしてその菊座を嬲った指に塗られていたローションは、どうやら媚薬の成分が入っているらしい。

 塗られた場所から、ドンドン熱が出始めている。



 午前中も散々だったが、午後の仕事もボロボロだった。些細ではあるもののミスを連発し、そんな自分を呪いながらも必死で自らフォローした。

 そのおかげで重篤な失敗は回避できたものの、嫌になるほど時間がかかってしまった。この時刻まで残っているのもそのせいだ。





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