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短編小説
7
 世界中のオカルト研究家が欲しがるその古い皮製表紙の本は、あまりにいかがわしいその内容ゆえに、カルディス国教会から発禁命令が出ているいわくつきのものだ。真っ当な生活をしている市民には縁のない代物である。

 魔道書のコレクターであり、悪しきオカルティストと対決することがあるとも言われているカルナが、それを所蔵しているのはある意味当然だ。

 だが、デリクはどうして借りたいと言い出したのかを、彼はいぶかしんでいるらしい。



「やだなぁ。まさか先輩、これでボクが怪しいことをするなんて思ってないでしょうね? そんな知識はないですよ! パブで会う仲間とオカルトの話になって、今度奴等にこれで勉強したことを話してやろうと思いましてね」



 デリクは吹き出した。年齢に似合わない童顔の彼が声を立てて笑うと、その場は何とも明るい雰囲気に包まれる。

 その笑顔にほだされたか、カルナはかすかに目元を和ませて書物を後輩に手渡した。



「あんまり感心しない話題だな。仲間を選んだ方がいい」

「検討しましょう」



 神妙な顔を作って≪妖魔の書≫を受け取ったデリクは、カルナの手に目が行った。



 細長く、節くれだった男らしい手だ。

 しかしデリクの目を引いたのは、その手首の痣だった。



 プレスの効いたワイシャツの袖口から覗く手首に、まるで何かに縛られたような輪状の青黒い痣がグロテスクに浮いているのだ。



「先輩、その痣は…?」



 カルナの顔色が、明らかに変わった。酷く強張り、蒼白になって袖を引き下げる。



「…何でもない」



 掠れた硬い声。冷ややかながらも、動揺を隠せていない。

 デリクは食い下がった。





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あきゅろす。
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