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短編小説
3
「そうか」



 カルナはそれだけ言うと、また口を閉ざした。揺れの激しい車内に、沈黙が舞い降りる。

 この日、デリクはカルナが所蔵する書物を借りるため、ともにカルナの屋敷に向かっているのだ。

 書物を貸し出すのはともかく、屋敷に連れていくのをカルナは随分と渋った。

 急ぎだからそこを何とか、とデリクが拝み倒して、やっとの思いで同行を許されたのだった。

 これで、少しでもカルナのことが分かるかもしれない。そう思うと、デリクの胸は高鳴る。



 ≪J.スコット新聞社≫でのカルナの位置は特殊だ。



 ≪デイリー・シーン≫の編集長エドワード・レスターと同時期に入社したらしいが、カルナの方はその日刊紙のゴシップ欄に時折コラムめいた記事を書くだけの、どちらかといえばごく潰しな平記者に過ぎない。

 それにもかかわらず、彼は一切非難されない。

 社員のみならず社長のスコットですら彼に一目を置いていて、その行動を咎めることをしないのだ。

 その理由は、社員にははっきりとは知らされていない。レスターとスコットだけが知っているとも言われている。

 ただ噂では、邪教の教団や悪質なオカルティストと大立ち回りを演じているという。

 それが本当だかどうかは分からないが、彼がどこかに行って何日も帰らないことが度々あるのは確かだ。



―――邪教や、オカルティスト…ね………



 デリクはほとんど無意識に唇を舐めていた。





*  *  *   *  *






 闇のしじまに、警官らの吹き鳴らす鋭い笛の音が響く。





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あきゅろす。
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