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短編小説
2
 重く辺りを支配する霧が、一月の夜をさらに暗いものにしている。

 車のヘッドライトのおかげで、行く手の道路がようやく見えるといった有様だ。



 デリク・シェーレは目の端で、ハンドルを握る男の横顔をみやった。



 男の、荒々しさと神経質さが絶妙な配分で混ざり合った、鋭角的な顔立ちは若々しい。しかしその緑灰色の瞳には、まるで長い年月を生きてきた者のような翳りがある。

 デリクと同じく≪J.スコット新聞社≫で記者をしているその男の名は、カルナ・グローンという。



「――どうした?」



 デリクには横顔を見せたまま、カルナは口を開いた。デリクの視線を感じての、問いかけだ。

 その低い声は氷のように冷たく、デリクは密かに背筋を震わせた



「いえ、別に…。ただ、よくこんな濃霧の中を運転できるなって思って」



 荒れた石畳の道を、カルナが運転する車はかなりのスピードで走っている。

 濃霧から透かし見える景色は、ビルが建ち並ぶ都市部から木々が鬱蒼と生い茂る郊外のそれになっていた。

 カルナは肩を軽く竦めた。



「毎日通い慣れている道だからな。ただ、帰りは送れないが、本当にそれでいいのか?」



 男の思いがけない気遣いの言葉に、デリクは微かに頬を染めた。



「大丈夫ですよ、タクシーを呼びますから。それに、ボクが無理を言って先輩についてきたんですから、気にしないでください」



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あきゅろす。
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