短編小説
1
その性の狂宴は、屋敷の最奥の部屋で繰り広げられていた。
明かりは消され、窓から差し込む霧で薄まった月光のみが、その部屋を淡く照らしている。
断続的に響く、滑った水音と軋むベッドの音。
時折、堪えきれずに零れる嬌声。
荒い息遣いに混じるそれは、男の声だ。
低く掠れたその喘ぎは、聴くものに戦慄すら与えるほど官能的だ。
古き時代の天蓋つきベッドの上の男は、獣のように四つに這い蹲っている。
両膝と両肘を皺と染みだらけのシーツに突き、うなだれている。
月光が、男の濡れた背中を浮かび上がらせている。
背後から貫かれ喘ぐたびに、その決して貧弱でない背筋が、淫靡によじれてのた打ち回る。
男の背後から腰にのしかかっているはずのものの姿は、闇に沈んで見えない。見えない奥で、何かが激しく蠢いている。蠢き、そして男に纏わりつき、攻めあげる。
まるで、闇そのものに尻を犯されているかのようだ。
「あああ! …も、もう………や、止めてくれ…!」
黒い髪の先から汗の雫を散らし、男は悲鳴を上げた。
激しい苦悶の中に、それでもどこか喜悦が混じっている。相反する感覚に、魂そのものが引き裂かれそうな声だ。
「止めてく…あ、んああ――――っ!」
男は尾を引く叫びを上げ、果てた。白濁した体液が、皺だらけのシーツを汚す。
しかし、陵辱は終わらない。
* * * * *
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