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短編小説
7
「見て。今度の博覧会は、ただの科学技術品評会ではないの」



 ジェシカ・コーベンは子供に言い聞かせるように言った。その高いけれど威厳に満ちた声は、高い天井の展示館によく響き渡った。

 よく鍛えられた者の声だ。カルナはそう思う。

 実際、この小柄な二十代の女性は、細身だが鋼のような肉体を持っているのが質素な服越しにも感じられる。考古学者という立場のせいだろうか。きっと世界の様々な遺跡を発掘しているのだろう。



「知っている? ここには暗黒の大陸と呼ばれる、あの南大陸の遺跡から出土したものが出展されるということを」



 ジェシカは微笑んだ。カルナは静かに相槌を打つ。





 この年、カルディス首都カープールは光に包まれていた。

 万国博覧会が開催されるのだ。

 カープール郊外の森は切り開かれ、鉄骨をこれ見よがしに使用したパビリオンが建設された。

 特徴的なのが、ガラスの使用量だ。外壁の一部、もしくは大部分にガラスが使われ、そこを大量の電球が照らし出した。

 電気の万博。そう人々は呼び、各国は自国の科学技術を誇示しあう。



 同時に、世界各地の実に様々な固有文化を紹介する場でもあった。

 交通網の発達で、地球の裏側の国の物も容易にもたらされるようになったのだ。



 それらは南大陸遺跡館という石造りの古代遺跡を模したパビリオンにまとめて展示されることになっている。そこにカルナたちはいた。



「その奥の一角よ」



 ジェシカはホールの奥を指差した。そこは暗い闇に沈んでいる。

 万博の会期中は煌びやかに電飾で照らし出されるであろうホール内は、まだ展示物が搬入されたばかりなので当然ながら最小限の非常灯しか点いていない。しかも今は真夜中なのだ。

 夜の帳は重く垂れ、パビリオン全体がその重い影の中に沈んでいるようだ。





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あきゅろす。
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