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短編小説
5


「やっ、やめっ…! く、くぅ…っ!」



 乱れはじめたズボンの前を両手で押さえつけながら、カルナは身体を折った。ゴツッと額がテーブルに当たって音を立てる。悲鳴を上げ続ける口の端から涎が流れる。

 シオンは、骨太の、しかししなやかな手を組む。



「さあ、こたえろ。お前はメトセラ教会に行ったのだろう?」

「………知っている…んなら…聞くな…」



 息も荒く喘ぎながら、カルナは毒づいた。



 シオンの言うとおり、カルナはカルディスの東端にあるメトセラ教会に赴いた。そこは有名なエクソシスト教会なのだ。

 悪魔祓いを専門とする神父に、自分が愛用している拳銃のメンテナンスを依頼してきた。そのこと自体に隠すことはない。その銃でシオンを撃ったこともあるのだから。

 だが、そこで出会った神父が問題だった。初めて会った神父だったのだが、そいつはカルナに露骨な敵意を向けてきた。



―――オカルティストなどと名乗っているが、お前自身が魔物ではないのか。お前には魔物のニオイがする。



―――いや、お前の血自体が魔そのものだ。



 その神父はブラッドと言った。

 分厚いメガネをかけた細面の男だが、レンズの奥の目は恐ろしく鋭い。その目は、カルナの血統全てを疑っていると言っていた。



―――否定できない。



 その時カルナは苦笑するしかなかった。

 自分に流れる血の存在。自分自身がそれを疑っている。

 シオンに呪われた身。けれど、それよりも先に血が汚れているのではないか。

 だから―――



 自分自身への疑いが、迷いを生んだ。



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あきゅろす。
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