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短編小説
3
 カルナの背中にある傷に埋め込まれた、シオンの肉の一部。それが長虫の形になって身体の外に出てきたのだ。



「や…止めろっ………」



 額から噴き出した汗の滴がポタポタと落ち、テーブルクロスに染みをつける。その生地を、カルナは無意識に掴み、握り締めていた。テーブルクロスに皺が寄り、そばのワイングラスが音を立てて倒れる。

 服の下を、蛇が這っていた。ズルズルと小さな鱗を動かし、長い胴体をくねらせてカルナの皮膚を愛撫するかのように蠢きながら。

 見れば、薄いシャツが身体に巻きついていく蛇の形を浮かび上がらせている。



「何もしていないぞ?」



 シオンは悶えるカルナを嬲るような目付きで見ている。いや、実際に嬲っている。

 手も触れず、蛇を操って。



「さあ、早く食事をとりたまえ。それとも食べたくない理由でもあるのか?」

「…っつ」



 ギリ…とカルナは奥歯を噛む。そして、自分が蛇を操っているくせにそ知らぬ顔をするシオンを刺すような目で睨みつけた。

 手元にあるナイフを奴に突き立てられたら、いくらか気分は晴れるかもしれない。けれど、そんなことを出来る状態ではなかった。

 服の下で、背中から腹に回った蛇が、臍に向けて移動する。そして臍の窪みを細い先が割れた舌で舐める。

 その淫靡な感覚に、カルナの身体が跳ねた。

 しばし舌で嬲った蛇は、また動き出す。臍を越えて、下半身へと。震える敏感な下腹を這い、叢を掻き分ける。

 カルナは小さく息を呑んだ。テーブルクロスを握ったままの手が小刻みに震えだす。



「もう…止せっ! 嬲るな…!」



 息が荒くなるのをボンヤリと感じながら、カルナは己に抗うように叫んだ。身体の感覚のほとんどは、下半身に持っていかれている。

 ジワジワと下半身に近づいていく様が、かえって焦らしているかのようだ。



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あきゅろす。
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