短編小説
2
だが、嗤っているのだけは分かる。嘲笑している。
シオン・ラグナル。それが奴の名だ。
その姿は、まさに雄々しく目に眩しい美の化身。完璧な骨格、流れる絹糸のような銀髪、性別を超えた美貌。
ただし黄金の光を帯びる瞳が、彼が人間ではないことを知らしめる。
おそらくはこの屋敷の主の一族を滅ぼし、この地に永遠の呪いをもたらした元凶。
聖具を用いても滅することの出来ない相手。
「応えよ、カルナ」
どんな王族よりも傲慢で高貴な唇に笑みを刻み、シオンは言う。嘲りもあらわな声で。
「食事中に落ち着き無く動くとは、礼儀がなってないな」
「うるさい…貴様が礼儀のことを言うなど…笑止千万…だ………」
食事などしなくてもいい存在の癖にワイングラスを顔の前に掲げるシオンに、カルナは屈辱に燃える緑灰色の瞳を据える。
シオンはくくっと喉奥で笑う。
「そうだな。人間の下らぬ決め事など、我には関係ないことだ」
グラスをテーブルに置いたシオンは、優雅に手を振る。
「―――っ!!」
その瞬間、カルナは声にならない悲鳴を上げながらテーブルに突っ伏した。
背中の肉が大きく爆ぜたのだ。
ボコリと嫌な音を立て、背中が大きく盛り上がる。スーツの生地も強く引っ張られて、その奥のものの形をあらわにする。
―――蛇が這い出てくる。
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