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短編小説
4


 当麻が叫んだ時には、リムは得体の知れない機械の裏に回っていた。そこには巨大な鉄製の檻が置いてあり………



「きゃああああああ?!」



 目の前に立ちふさがった、ヌメヌメと不気味に光る赤黒い巨大物体。塗り壁のように聳えるそれは柔らかく、息をするようにブヨブヨと動いている。

 唖然と見上げるリムの脚に、何かが巻きついた。

 ベチャリとした感触が気持ち悪いと思う間もなく、思った以上に強い力で引っ張られて、気がつけば宙吊りになってしまっていた。



「はかせぇ! こ、これ何〜?!」



 大きなシャツの下はパンツ一丁だ。逆さ吊りになってシャツが胸までめくれ上がってしまった情けない自分の格好に、リムは涙目になった。

 慌てて追ってきた当麻は、自分の手の届かない高さまで持ち上げられてしまったリムを見上げてオロオロするばかりだ。



「ええと、これは…ウミくんだ」

「バカぁ〜名前を尋ねてんじゃないよぉ!」



 ピントのずれた返事をする当麻に、リムは両腕を振り回す。

 リムを吊り上げているのは、巨大なタコだった。5メートルは下らないだろう巨体は無理矢理鉄製の檻に押し込まれているが、その長い脚は格子の隙間から外に出てうねっている。そのうちの一本がリムの脚に絡み付いているのだ。

 どうやら当麻のいうこの『ウミくん』は、彼の実験動物の成れの果てのようだ。

 当麻は冷や汗をかきながらタコに向かってなにやら説得している。



「ダメだよ、ウミくん! リムが嫌がっているじゃないか。放してあげなさい!」



 当麻が自分を助けてくれようとしているのは分かるが、リムは些細なことが気になってしまった。



「うわぁ〜ん、博士ってばタコには『くん』づけで、ボクは呼び捨てなんだ〜」

「あ? いやっ、別に他意はないよ?!」



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あきゅろす。
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