短編小説
3
「え?」
ボリボリと頭を掻きながらどこか虚ろな眼差しでリムを見下ろしていた当麻は、ようやくリムの訴えの内容を理解したようだ。急にあたふたしはじめる。
「ああ、そうか、そんな時間か? すぐに仕度するから、待っててくれるかな?」
「いいよぉ。忙しいんなら、ボクがやるよ。これでも博士がやってんの見てるから、出来ないこともないと思うよ」
「だ・めっ」
眉間に皺を刻んで、当麻は言い切る。何故かメガネまでキラーンと鋭く光る。
リムが何かしようと言い出すと、決まって彼は禁止するのだ。曰く、怪我したら大変だからという理由で。
一度研究に没頭してしまうとリムの存在を忘れてしまいがちな当麻だが、そういう意味ではリムを大切にしている。少し過保護なくらいに。
「私が作るから、リムは待ってなさい。いいね?」
「つまんないの」
リムは唇を可愛らしく尖らせ、近くの机の上にチョコンと座った。けれど根が甘ったれなので、それ以上反抗はしない。当麻の大きな掌で柔らかい髪を撫でられて、ついつい目を細めてしまう。
「しょうがないね。分かったよ。ここで大人しく待ってる」
「え? ここで?」
「ダメなの?」
いつもだったらこの部屋にいても特に注意されたりしない。いつもと違う当麻の様子に、リムは興味をそそられた。
「なぁに? 今日はどうかした? あ、博士は奥から出てきたね。そっちに何かあんの?」
リムは素早く机から降りて、妙な機械の隙間に向かった。当麻が止めようと手を出したが、それをスルリと潜り抜ける。
「待ちなさいリム! そっちは…」
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