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短編小説
4




 それは、半年前に起きた。







 『へスペルス』―――明けの明星と名乗る教団がその活動を開始したのは、有史以前だという説がある。

 しかし強力に拡大し、凶悪化してきたのは今世紀に入ってからだ。

 教主が代替わりしてからのことだという。

 その活動内容は厳重に伏せられているが、地下で囁かれている噂では、何らかの召喚を行おうとしているらしい。



「こいつはやばいぞ」



 ≪J.スコット新聞社≫の二階に、≪デイリー・シーン≫の編集部がある。

 取材先から戻ってきた記者たちが走り回ったり、オペレーターたちがタイプを叩いたり、大声で指示を出し合ったりしていて、売れている新聞紙のオフィスらしい騒々しさで、なかなかに活気に満ちている。

 そんななか、編集長エドワード・レスターは自分のオフィスで苦虫を噛み潰した顔をしていた。



「聞いているのか? カルナ」



 イライラと万年筆を振れば、ブースの壁に背を預けて立っているカルナが苦笑する。軽く腕を組んだその姿は不遜で、その長身と相成ってともすればオフィスの主よりも堂々として見える。



「聞いているさ。そんなにカリカリするなよ、エド。アルコールが切れたか?」

「ふん、ぬかせ。しつこいようだが、今回の相手はそんな舐めた態度でかかれる相手じゃない。あそこの連中は人殺しなんて屁とも思ってないことで有名なんだぞ。しかも、ただ殺すだけでなく恐ろしく残酷な手口でやるってな」

「分かっているよ」



 上司であり友人でもあるレスターを見るカルナの目が和んだ。この腹の少し出始めた口うるさい友人が、心底自分を心配していることを理解しているからだ。



 この日、カルナはレスターに休暇の申請をしにきていた。

 その理由は、独自のルートによる長期取材。しかし実際は、今裏の世界で有名になってきているヘスペルス教団への潜入のためである。





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あきゅろす。
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