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短編小説
3


 しかし、この屋敷は地獄よりも呪われている。

 いや、呪われているのはカルナ自身だ。

 裸足のまま窓辺に近寄り、カーテンを開ける。初々しい朝日が暗い室内を照らし出す。

 ただそれだけの動きなのに、カルナのしなやかな筋肉に覆われた身体はフラリと傾ぐ。



「ううぁっ………」



 唇からは、堪えきれない呻き声が漏れる。



 ―――身体の内側で、アレが蠢いている。

 背中の傷から埋め込まれた、呪いの証。



 それは筋細胞の間で確かに息づき、成長し、長虫そのものの動きでくねりだす。

 内側から身体をいいように貪られて、カルナは喘ぐ。

 出来ることならば皮膚を切り裂き、肉を断ってでも引きずり出してしまいたい。けれど、それはあまりにも奥にまで侵食している。神経に達するほどに。

 ズルリ―――………

 粘着質の何かが動く、滑る感触。



―――ああ、抉られる………這い回っている………



 身体の内部を犯されるおぞましさ。

 心臓近くまで潜ったそれの蠢動に、カルナは身をよじってのたうちまわるしかない。

 気配すらない時であっても、カルナの全てを侵食する呪い。



―――支配されていく―――………



* * *



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あきゅろす。
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