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短編小説
2
 人間としてのプライドを賭けて。

 ―――けれどこの抵抗こそが、皮肉にも己をより興奮させて堕落させていくスパイスの一つになっている。

 ズッズッとリズミカルに音を立ててソレが後腔を出入りする。尻の狭間の蕾を粘液と共に蹂躙する。

 刺激は疼きを呼び、さらに強い感覚が欲しくなる。

 圧倒的な、完全なる快楽への渇望を呼ぶ。

 気がつけば尻だけを高く上げ、ゆらゆらと揺らしながら刺激を強請っている。

 この世のものとは思えないほどの快感。凄まじい絶頂を求めて。



「あっあっあっあぅっ…」



 濡れきった声が漏れる。

 全身を朱に染めて。

 尻を高々と上げて………蛇に犯されている。

 金色の瞳の魔蛇に。



* * *





「―――!!」



 男は、言葉にならない悲鳴を上げながら跳ね起きた。

 中庭に続き窓から、カーテン越しに早朝の日差しが淡く差し込んでくる。

 そのせいだろうか。この部屋が深閑としているのは。

 あの圧倒的な気配がないのは―――。

 じっとりと滲む額の汗を拭い、男は小さく嘆息した。



 濡れたような黒髪に、緑灰色の瞳。彼の名はカルナ・グローンという。

 鋭角的で精悍な輪郭の顔がわずかに歪んでいるのは、夜の残滓によるものか。

 カルナは関節を軋ませながら、ベッドから降りた。



 自分には過ぎた大きさの天蓋つきのベッドは、およそ百年前に流行した様式のものだ。数は少ないが寝室に揃う家具もみな同じ時代の物で、重なる年月に相応しい佇まいを見せている。

 華美ではないが最高級の物が揃えられた貴族的な寝室。それはこの屋敷のどの部屋にも共通している。



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