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Sakura tree

オマケは、普段の日本での撮影風景だ。

壱織が映ると、悲鳴と共に「おーっ」という驚きや感動の声が上がった。
撮影中はいつもの壱織で、カメラに気付くと気さくに笑って話しかけた。

「何のカメラ?あぁ、メイキングか。怜ちゃんの写真集の」
「うん、そうなのー」

二人のファンは、彼らが怜ちゃんのんちゃんと呼び合うのを喜ぶ傾向にある。
彼らの仲の良さや素が見られるようで嬉しいからだ。

「じゃ、今関係ねぇーじゃん」
「いーのっ。イベントで流すから、のんちゃんも映っといて」

冗談混じりに甘えてねだると、甘い兄の顔が覗く。

「しゃーないな」

言いながら、自然に腹部に腕を絡める。
楽屋でも壱織がべったり絡んで、しかしそれには触れず自然に会話は続く。

「フランス行ったんだろ?どうだったのよ」
「んー?楽しかったー。忙しかったけど」
「へー、よかったじゃん」

話しながらお菓子を取った壱織は、それを怜姫の口に運ぶ。
怜姫もそれを黙って受け入れている。
壱織はカメラにいたずらな笑みを見せた。

「餌付け」

お兄ちゃんの愛情が見え、可愛いと思ってる事が伝わる。
そこにたまたま立ち寄った悟が現れ、観ている会場は更にどよめいた。
メイキングのカメラだと説明されても悟の反応は薄い。
それより怜の体調が心配なのだ。

「体は?忙しいんだろう?平気なのか?」

そこでもさらりと頬を触るという、彼らにとっては然り気無いスキンシップがはかられる。

「うん。ねぇねぇ、悟兄それ何ー?」

兄の心配より今は彼の手にある箱の方が気になっている。

「ケーキ屋の箱だろ。怜ちゃんに箱だけ差し入れだって」
「いやっ、中入ってるでしょ!」
「さて、入ってるかな?」

壱織はふざけて遊んでいる。
会場は笑いに満ちる。

「何があるのー?ねぇねぇ」

怜は箱に手をのばし、見せて!と受け取る体勢だ。

「さて、入ってるかな?」

悟も壱織のセリフをマネて、怜をからかう。

「え!?入ってるでしょ!?イヤだ、箱だけなんて!」
「素敵な箱じゃないか、怜ちゃん。なー、兄貴」
「ほら、怜。箱」

恐る恐る箱を受け取ると、ずしっと重みを感じる。

「入ってるじゃなーい!もぉヤダー!」

壱織はケラケラ笑い、悟もふっと吹き出す。
遊ばれて怒る事も無く、怜姫は箱を開けるともうシュークリームに夢中だ。

「あっ、エクレアもあるー。どっちにしよっかなー。どっちも食べたら太っちゃうなー」

うきうきと難しい問題に立ち向かうが、背後の悪魔が囁く。

「いいじゃん、食いたいなら」
「え〜?でもぉ」

そして悪魔はサービスを知っている。

「大丈夫でしょ、怜ちゃん細いんだから」

そう言ってTシャツをぺらっと捲り、腹部が覗く。

「いやぁ!バカ!悟兄ー!のんちゃんがバカー!」
「俺がバカって何だ!」
「怜、望はこういう子なんだ。諦めなさい」

すました顔して、悟はさらりと冗談を言う。

「兄貴、ヒドイ!」
「はーい」
「はーいじゃねぇよ!」

感動と笑いのメイキングになってしまったこの密着映像は、それぞれのファンの間で話題になり、後に要望でDVD化される事になった。

VTRが終わり怜姫が登場すると、大きな歓声が会場に響いた。
挨拶をして、怜姫はまず色々な事を謝った。
隠していた沢山の事。
それで傷付けてしまったかもしれない事。

「だいじょぶだよー!」
「謝らないでー!」

次々重なるその声に、怜は救われた。

「飛翔する薔薇は、大きな木が受けとめてくれました。私は皆に助けられたから、今度は皆を受けとめてあげられるような人になりたいです」

信念。
世界に一人ぼっちだと思っても、何処かで誰かが「わかる」と言ってくれるだけで救われる事がある。
遠くても。例え小さく頼りなくても。
今度は、私が誰かの木になりたい。

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