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Sakura tree

レイコは、マキちゃんに「気になっちゃってる」と言って真弓について聞いた。
友達が付き合ってると知りながらわざわざ宣言するなんて図々しいな、と思い、マキちゃんは何も喋らなかった。
と言っても、何処の中学の教師ぐらいは話に出て知っているので、マキちゃんの方もそれ以上喋る事は無いのだが。
レイコは本気で狙いに行く様子で、どうやら他人のものに興味を持つタイプなんじゃ?とマキちゃんは危機感を抱いた。
真弓が一切彼女に興味を示さなかったのも、彼女を燃えさせたようだ。

怜ちゃんはせっかく先生と付き合えて幸せになれたのに、ここでぶち壊されてはかなわない。
マキちゃんは彼女に諦めてもらうために、その事実を告白した。
が。なお悪い事に、それが逆に彼女に火をつけてしまった。

戦う相手が女じゃないと知り、レイコは侮辱されてる気になった。
オカマに負けてるのかと思うと悔しくて、当然女の自分が勝つべきだと胸を張った。
そのお相手がどれだけお綺麗なものかしらないけれど、本物の女にはかなわない。
簡単に奪ってやれると自信を持った。

レイコはそもそも真弓を誤解している。
男なんだから、血迷ってちょっとくらいお綺麗なオカマに走ったって結局本物の女がいいはず、と。
中にはそんな人もいるだろう。
けれど真弓は女性が恋愛対象にならない同性愛者で、決して血迷ったわけでも苦し紛れに妥協したわけでもない。

真弓はさすがにささくれた気分になった。
名前は似ていてもこんなに違うものかと呆れ、うんざりしていた。
怜と会えない時はファイリングした雑誌を見たり、怜が働いていた店で怜ファンの客達と語らうのが密かな楽しみだった。
なのに、そこに現れた異質な存在。
彼女は、客達の冷ややかな視線を受けていた。
周りは真弓が怜の大事な人だと知っているし、彼女がまとわりついて迷惑そうなのも見てわかるので、ついつい批判的になる。
それなのに場違いな空気も気にせず、レイコは図太く真弓への攻撃を続けた。


帰ってくると、怜はお土産を渡すという口実で先生に“会いたい”と言った。

照れながら話すのを、真弓は可愛らしいと思った。
それに二人で見たあの絵画のものを選んでくれたという事が尚嬉しかった。

「ありがとうございます。大切に使います」

笑いかけると、照れて目をそらすのが可愛い。
可愛いのだけれど、これくらいで恥じらっていてはこれから先どうするのだろうと思う。
真弓はその細く綺麗な指先をそっととって、彼を真っ直ぐに見つめた。
驚いて咄嗟に手を引こうとしたのを阻んで、真剣な思いを口にする。

「慣れてください」

こんな事で自分を繋ぎ止めてほしいとは思っていない。
ごまかしたいのでも勿論ない。
ただ、女性の意地に付き合わされて、少し疲れていた。
この美しい人に癒されたかった。

怜は何とか羞恥に耐え、頑張ってこくりと一つ頷いた。
それだけで、真弓は心が少し軽くなった気がした。





マキちゃんは両手を合わせ、必死に友達に謝っていた。
怜は誰にも怒りを抱かず、まずは自分の落ち度を探った。
自分が手を繋ぐのも恥ずかしがって嫌がるから、先生は女の人に……とマイナス思考に走り、考えを改める。
先生はそんな人じゃないし、そんな自分に根気強く付き合ってくれる優しい人だ。

「だいたいあの人、恋愛をゲームかなんかだと思ってんのよ!怜ちゃんからとれるかどうかって!」

怜にはその気持ちがわからない。
好きじゃないのにそんな振りして、一体何が楽しいの?

「絶対ムリってわかってるのに!この天下の怜ちゃんから先生を奪えると思ってるのかしら!?」

自分の事のように怒ってくれるのが嬉しい。

「聞いて?私、笑いを堪えるのに大変だったんだから。先生ったら、ぜぇ〜んっぜんあの人を相手にしてないのに焦ってムキになっちゃってさぁ。ホントよ!?後で一ノ瀬先生にも聞いてみて!悪いけど、ざまぁみろって思っちゃった」

先生を疑うつもりは無かったけれど、それを聞いて安心した。

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