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Sakura tree

カフェで仲良くお喋りしている女の子が居た。
三人の内一人が携帯を見ながら、びっくりして他の二人に声をかける。

「ねぇ、ちょっと!また『遠矢しろの』が怜姫の事書いてる!」
「うそ〜!」
「しかもツーショットまで載せてるし!」
「うわ、しかもまだ英語表記の方じゃーん。今は違うのにさぁ」
「やっぱこの人まだ怜姫の事男としてっていうかさぁ、ストレートだと思って見てるよねー」
「うん!わかるー。だってすっごい女出してんじゃん、コレ」

三人はデビュー時からの怜姫のファンで、Rekiから怜姫へのカミングアウト後も応援し続けている。
怜姫がいわゆるオネエと言われるキャラで、ゲイだったとわかっても離れなかったのが彼女達のファンとしての誇りだ。
そんな事で離れるのは本当のファンじゃない。
本当のファンなら真実の怜姫を受け入れて応援出来るはずだし、クールで男らしい異性愛者じゃなかったから裏切られたと怒り、落胆するのは間違ってると思っている。

「売れる為にキャラつくったとか言われてるらしいけどさぁ、ただ悔しいからひがんでるだけじゃん、ねぇ?」
「壱織だって怜姫の為に兄弟だって公表したんでしょー?売名じゃなくて怜姫を守る為なのにね!?」
「カメラマンのお兄さんだって言ってたもんね?」

『本人がとても辛そうで、このままじゃいけないと判断したので、家族みんなで支える事に決めました』と。
そして『これが自分達が見てきた自然な怜姫』だと。

「カッコイイのもいいけど、それって素の可愛いとこがあるからこそだよねー」
「そうそうー!怜姫は怜姫だから好きなんだもんねー?」
「ねぇ、今度ハリウッド映画の試写会に怜姫が兄弟三人で招待されてるって噂あるけど、行くー?」


離れる者も居るが、怜姫を理解しようとつとめ、応援する者が居る事も確かだ。





媚びる様な目に、声色。
それには見覚えがあった。
女の子に好意を抱かれた時もこうだった。
しかしアイドルとはこういう振る舞いをするものなのかもしれないし、自分に利用価値は無くても後ろの兄達を見てそうするんだろうとこれを納得した。

女の子は恋愛対象じゃないが、女装せず男として仕事するとなると何となく先生には見られたくないと思う。
男としての役割を演じているのを見られるのが恥ずかしいのだ。

女装して性質もそちら寄りであっても、先生とどっちが男役で女役などと考えた事はない。
考えるまでもなくどちらも男で、対等だと思ってるからだ。

恥ずかしいのは、男らしい自分を装う行為だ。

色々な事を先生と話した時、先生は両性愛者(バイセクシャル)ではなくゲイだと言っていた。
だから男が恋愛対象になるのに、怜はどちらかといえば女性的だ。
一体何処を、どうして好きになったのか。
怜はそこを聞かなかったから、気づいたら気になって不安になった。

男が好きなら、もっと男らしい方がいいのか。
最初はオネエじゃなく男として会ったんだし、その可能性はある。
けれど今の自分に告白してくれたんだし、ありのままがいいとも言ってくれた。

そんな事をうだうだ考えて結局思い至るのは、先生の好みのタイプに近づきたい!という事だった。


長いレッドカーペットを、ハリウッド映画の試写会に招待された芸能人達が歩いている。
怜は自分だけ場違いだと思って居づらかったが、兄達のおまけだと思う事にした。

来日した俳優の挨拶もあるという事で沢山の人やマスコミがつめかけ、ネットでも生中継されている。
レッドカーペットの様子も中継されるから、真弓はそれを見ていた。


「怜ちゃん、スカートの裾踏んで転ぶなよ?」
「どっちかに掴まってなさい」

心配性で過保護な兄二人は、ここでもそれを発揮する。
兄二人と腕を組んだ怜は、幸せそうに笑った。





別世界の住人だった恋人が目の前に居る感覚が、真弓はまだ慣れなかった。
しかも場所が真弓の部屋だ。

座るなり真面目な顔をして何を言うのかと思えば、髪は短い方が好きか?とか、どんな服装が好きか?とか……。

「あの……何です?」

びっくりして聞き返すと、理由を話してくれた。

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