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Sakura tree

髪は肩につくほどの長さで、仕草や口調も今とほとんど変わらなかったから、明るく元気なオネエキャラが女子に人気だった。
怜は容姿にも恵まれていたから、男子からも認められていた。

仲のいい友達は女の子ばかりで、女の子達がする恋愛の話はいつも興味無いと言って避けていた。
しかし、それは二年の時だった。
皆でお金を出しあって、誕生日にシルバーアクセサリーをプレゼントしてくれた。
帰り際、プレゼントを教室に忘れてきた事を思い出して引き返すと、教室にはまだ男子達が十人ほど残って喋っていた。
そこでたまたま好きなヤツは居ないのかとからかわれ、びっくりして思わずいつもと違う反応をしてしまった。
いつもならサラリと流すのに、照れて赤面してしまったから、恐らくゲイや同性愛という事を生々しく実感し、拒絶反応が出たのだろう。
その日から、その中の一人をボスにした数人によくからかわれるようになった。

「男が好きってどんな感じなの?」

面白がって仲間とニヤニヤしていたから、攻撃されている事実に呆然とした。
ショックで何も出来なかったけれど、女の子達が庇ってくれた。
それでも、それは続いた。

「なぁなぁ、ホモってマジで女じゃ反応しねーの?」
「もったいねー!」
「男とってどうやってヤんの?もうヤッた!?」

下品な事を言われて、恥ずかしくて、悔しくて、涙が出た。
女の子達は本気で怒ってくれて、中には酷いと言って一緒に泣いてくれる子も居た。
「怜ちゃんは心は女の子なのに」と言っていたが、気持ちは嬉しかったから否定せずに黙っていた。

最初にからかわれた時、いつもみたいに明るくふざけて返せばよかったんだ。
けれど意地悪な、悪意のようなものを感じてしまったから、咄嗟には出来なかった。

それからは、クラスの女の子が団結して守ってくれるようになった。
そしてクラスは男子と女子の二つに別れ、最悪な空気になった。
教師は「人の個性を認めよう」と教えたが、問題は一向に解決しなかった。

ある時いよいよ、不満が爆発した女子と男子で大喧嘩が始まってしまい、大きな騒ぎにまでなった。
自分のせいで、クラスがどんどん壊れていく。

うんざりしていた。
毎日こんな事の繰り返しだった。
ぐるぐると、きっとどす黒い色であろう感情が渦巻いて、ぷつっと何かが切れた。

「死ねばいいのか……」

男子は「大げさだ」と言って笑った。
飛躍しすぎだ、と。

ほらね。
これが証拠なのだ。

言葉で簡単に人を追い詰め、人の人格をも殺せる事を、彼らはまったく理解していない。

「同じだ」

彼らはそれを馬鹿にした。

「私は人に変だと思われたくてやってるんじゃない!これが自然な自分だからだ!」

頭にきていて、声の限り怒鳴り散らした。

「人の人格を否定してるって事は、その人を殺そうとしてるって事と同じだ!!」

だから怒声も口調も男に戻っていて、ただ怒りのままに笑った奴らを指差して責め立てた。

「それを“大げさだ”なんて軽く笑って言えるって事は!そんな自覚も無く!人の事を軽く見て!幼稚ないじめごっこで遊んでるって事だ!!」

思い付く限りの言葉で、彼らを侮辱してやろうと思った。

「私を殺すのが目的じゃないんなら、他にもっとマシな遊びを見つけたらどうだ!!」

静まり返った教室の中で、息切れした怜の呼吸音だけが聞こえていた。

毎日毎日ねちねちと絡まれ、相当溜まっていたのか。それとも単にまだ拗ねていじけていた刺々しさが残っていたからなのか。
とことん追い詰めてやるつもりだった。
それなら骨の一本も折ってやるわ!と、その時は本気で思った。

「あー!わかった!死ねって事だな!?」

何処か冷静なところで、二階からならそれくらいで済むだろうと思ったから。
だからズンズンと窓に近寄り、乗り越えてベランダに出ようとするのを女子が泣き叫んで止めた。

「やめてェー!」
「怜ちゃん死んじゃうー!」
「男子も止めてよ!」
「早く怜ちゃんに謝れ!」


結果、男子を謝らせる事に成功したわけだが、その後教師にはきつく叱られた。
そしてブチ切れて男が出てしまった為、卒業するまで何人かの女の子から告白されてしまった。


恋愛に関わるのは厄介だ。
例え軽いおしゃべり程度でも、それは“気持ち悪い”もので、拒絶、排除の対象になる。
なのに想いを止められず、一つ一つ解禁してきてしまった。
そして今目の前に、想いが結実しようとしている。

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あきゅろす。
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