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Sakura tree

怜は両手で顔を覆い、泣き出してしまった。
それを見て初めて、真弓は怒りで声を荒らげた。

「いい加減にしてください!迷惑なのはどっちですか!仮にも怜さんが好きだったんなら、怜さんが嫌がるような事はやめたらどうですか?」

響生が怜に告白した事を真弓が知っていたから、響生もムキになる。

「関係ねぇだろ!お前こそ俺達の間に入ってきてジャマなんだよ!俺は怜に告白されたんだよ。だから迷惑なのは俺じゃないの。お前!帰るのはそっちだ」

あごをしゃくって、響生は真弓に勝利宣言した。
しかし真弓も負けてない。

「いえ。それなら帰るのは貴方です。断られてもしつこく付きまとうのは迷惑行為ですよ。怜さんは、とうに終わった事だと言っています。既に区切りがついた事だと」
「相談に乗るとかうまい事言って付きまとうのも迷惑行為じゃねーのかよ!教師のくせに!」
「僕は違います!」

真弓は覚悟した。

「僕は、怜さんに好意を抱いています」

ハッと顔を上げた怜が視界に入ったが、真弓はそちらを真っ直ぐには見られなかった。

「怜さんが悩んでる時には助けたいし、支えてあげたい。こんなに素敵で、芸能人にまでなれてしまうような怜さんが自分なんかに同じ想いを抱いてくれるとは思えないですけど。だけど僕はそれでも、怜さんの役に立てるならいい」
「だから…っ、それが迷惑だって…!」
「貴方はいまだに、こうして怜さんを傷付ける。結局変わらないんですよ」

響生は唖然とし、遂に言葉を失った。

「僕は……。僕なら、決してそんな事はしません」
「怜……」

最後にすがる様に、響生は怜の名前を呼んだ。
怜は恐がって反射的に真弓に体を寄せてしまい、それを見た響生はそのままショックを受けた様子で帰っていった。

怜に告白されたと自慢げに言っていたが、響生は暴言を吐いてそれを切り捨てたのだ。
まだ子供で受け入れられなかったとはいえ、結局当時から怜を傷付ける方法しかとれない事に気づいて、ショックを受けたのだろう。
そして響生は、怜が真弓の告白を聞いて赤面するのを見た。
そこでやっと、自分こそが噛ませ犬だったのだと知った。


もじもじと両手の指先を絡ませる怜を見て、真弓は何て言っていいかわからなくなった。
いくら怜を自分のものにしようと必死だったとはいえ、響生が怜まで傷付ける様な事を言ったのが許せなくてカッときてしまった。

「ご近所迷惑でしたよね?すみません」

変な事を言ってると思いつつ、けれど動揺していてそれ以外思い付かなかった。

「あの……では…………お休みなさい」

言われるがまま、聞き直す事も出来ず、怜は真っ赤になってぺこりと頭を下げた。

真弓は怜が小走りで家に入るまで見ていて、それから肩を落として帰っていった。
挑発された結果、喧嘩腰で勢いに乗って言ってしまったから、もしかしたら怜を助ける為についた真弓の嘘だと思われた可能性もあるからだ。
きちんと最後に「さっきのは本気です」とか何とか言っておけばよかった。と、真弓は自分を情けなく思った。





ぱたぱたと自室にかけ戻る怜の気配を、望はキッチンで確認した。
怜の元に中学の同級生とやらが訪ねてきてから、ずっと家の前でうろうろしていたから、心配になってずっと怜を待っていたのだ。
何かあったらすぐに飛び出していこうと思っていたのに、その出番は来なかった。
先にヒーローが現れてしまったからだ。
いや。この場合、王子様と言うべきか。

二人はどうなるんだろう?と気になるところもあるが、相手が教師だという事が心配だった。
怜はもう芸能人だから。
万が一バレたりしたら、学校で問題になるかもしれない。
その時、怜は傷付く事になるかもしれない。


長い溜息をついて、望も自分の部屋に戻っていった。

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あきゅろす。
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