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Sakura tree

サブカル系の女性向けファッション誌に加え、壱織がレギュラーとなっている雑誌にもRekiが定期的に載るようになっていった。
そんな時、Rekiを広告に使ったブランドが新しく出来るファッションビルにショップを出す事となり、またRekiにオファーが来た。

言っていた通り、今度はパンクもクラシックも中性的がテーマになった。
パンクは黒いアイメイクでクールな印象に。クラシックは髪を巻いて甘く。

広い客層をターゲットにしたファッションビルだから、ゴシック系ファッションに関心の無い層にもアピール出来るチャンスだ。
しかしその分大きな挑戦であり、そこに使う広告の役割も大きい。
そういう訳で、この広告は各ショップの他にも様々な雑誌に掲載された。


サブカル系のファッション誌やヴィジュアル系の音楽誌など、いくつかの雑誌に広告が載るらしい。というざっくりとした情報を元に、真弓は今回も本屋でチェックして手に入れてきた。
小さい広告が載ってるだけのものはさすがに買ってないが、それも記念だから……と買いたいのを何とか我慢した。

邪魔が入らない授業中の静かな時間に、幸せなファイリング作業を始める。
厳しい表情をした男らしい怜しか居ないと残念な気分だが、何しろ今回は怜らしい中性的なものだ。
壱織がレギュラーの雑誌では前者だったが、オマケ的なコーナーにもRekiを見つけて手を止めた。
撮影の合間のショットで、ベッドで寝てしまったものだ。

「怜さんだ……」

王子から貰った画像と同じ寝姿、寝顔がそこにあった。
真弓があげたテディベアのかわりにクッションを抱き締めているのを見て、くすりと笑う。

嬉しくてしばらく眺めた後、真弓は丁寧にそのページをファイルにしまった。

そうこうしている内に授業は終わり、真弓がいつまでもファイルを眺めているとまたもそこに王子がやって来て、慌ててファイルを引き出しにしまう。

寂しそうにしているのが気になって、イスをすすめて向き合う。

「どうしたの?」

そういえば、怜さんを助けてほしいと言って泣いていた時もちゃんと話を聞いてあげられなかった。と、思い出して真弓は反省した。
あの時はすぐに怜の元へ行ってしまったし、やはり、怜の事で泣くほど思い悩んでしまうのは王子の両親の事が関係しているんじゃないか、と。

「怜ちゃんを初めて見た時、髪の毛の色が僕と一緒だって思ったの」
「うん」
「それと、パパとも。写真で見ただけだけど……」

転校生を迎えるにあたり、学校側は保護者である桜木家の両親から色々な情報を聞いている。
特に真弓はこうして王子が来るようになってから、様子を桜木家の両親に電話で話している。

「パパは怜ちゃんよりももっと男っぽいけど、同じ金髪だし、何となく似てるって思って……。怜ちゃんはすごく優しかったし、だから、怜ちゃんならちゃんと僕を見てくれるって思ったから……」
「そうだね」
「僕は、パパのかわりに怜ちゃんに守ってもらいたいんじゃない。怜ちゃんにはそう思われるかもしれないけど……。僕は、怜ちゃんに色んなものをもらって嬉しかったから、僕も怜ちゃんに何かしてあげたい…!」

何故、誰も両親の話をしないのか。
何故、誰も両親の話をしてくれないのか。
そんなに嫌われるほど両親は悪い事をしたのか。
だから皆、自分の事をまともに見てくれないのか。
だから皆、自分の事をジャマにするのか。

そうやって過ごしてきた王子にとって、怜の存在は大きい。
パパに似ているだけじゃない。
新しい家族として迎えてくれた場所で、家族を得られた事を強烈に実感させてくれたヒーローだ。

自分の存在意義。
問題は違えど、きっと怜も王子も同じような事を悩んでいる。
だから王子は怜を慕い、そして、互いに相手を助けたいと思うのかもしれない。


王子の話を聞いて、真弓は桜木家の両親にその様子を話した。
怜の事にこだわるその根底にはやはり、両親の問題があると真弓は感じた。

一栄と杏子も王子の実の両親の事は知らず、王子が前に住んでいた老夫婦に聞いてもわからなかった。
いくら親戚だといっても、本家の許可無しに勝手に話すわけにいかないと断られたのだ。

真弓との電話で、一栄と杏子は王子の為にもう一度聞いてみる事に決めた。
しかし、老夫婦は「誤解があっても嫌だし、聞くなら本家に」と言って王子の叔父宅の連絡先を教えてくれた。

「きっと無理でしょうけど」という言葉の通り、現実は厳しかった。

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