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Sakura tree
第十二話 ダブルフェイスド
白金の長い髪からヴィジュアル系っぽいイメージを持たれた事で、サブカル系の女性向けファッション誌にRekiが載った。
パンクやゴシックなど複数のページに少しずつだったが、既に「あのお兄さんだ!」と認識されている皐と王子の学校ではちょっとした話題になっていた。

イメージ通りのクールでかっこいい姿で載っているRekiからは、巨大なテディベアと一緒に寝ている姿など想像出来ない。
しかもそのテディベアは想いを寄せる男性にプレゼントしてもらった物で、起きて一番に目に入ると幸せな気持ちで満たされるなど、到底考えられない事だ。
色気が漂う寝起きの気だるい感じも、抱えたテディベアにだらーんと寄りかかっているだけですっかりRekiらしさが消える。

この雑誌がきっかけとなり、Rekiにサブカル系のファッションブランドの広告の話がきた。
ゴシック系でも、ロックテイストとクラシカルなものの二種類をとの要望で、広告のイメージも「二つの顔」「二面性」といったきしくもRekiにはぴったりのものだった。

その話をマネージャーの雨崎から聞いた帰り道。
Reki仕様のまま歩いている怜の前に、珍しく友人を連れた皐がちょうど歩いていた。

「皐」

友人と一緒だったから、Reki仕様だったのはよかった。
声のトーンも歩き方も切り換えて話しかけると、皐の友人達は驚いて顔を見合った。

「怜ちゃん!お帰り」
「ただいま。皐ちゃんもお帰り」

驚きのあまりザッ!と距離をとった友人達は、男三人でかたまって興奮気味に囁き合っている。
といっても舞い上がっているので「お兄さんだ!」とか「ヤベェよ」「本物だよ」の繰り返しなのだが。
彼らは怜が高校に来た時に会った事があって、怜に手を振ってもらって喜んでいた面々だ。
実は怜が見たくてついてきたのだが、そんな理由で皐が許可するのは普通ではあり得ない。
そもそも壱織である望の事を気遣って、友人を家に招くなんて事は無いのだ。
だから怜も驚きを口にした。

「珍しいね?お友達と一緒なんて」

男のReki仕様とはいえ仕事ではないので、声のトーンがいくらか低くても話し方はやわらかく丁寧だ。
表情も雑誌で見る様なRekiのクールさは無く、ふんわりと微笑が浮かんでいる。
Rekiというかっこいいモデルではない、素の怜の可愛らしさが滲んでいて、友人達が高校で手を振ってもらった時の怜を思わせる。

「うん。何か、怜ちゃんを見たいって言うから」

皐がそれを許可したのは、友人達が単にミーハーな気持ちではないと感じたからだった。
勿論望が居ない時を狙って招いている。

怜はきょとん…として、友人達を見た。
皐が家に招くのだから、きっと信頼しているのだろう。と考えて、怜は嬉しくなってにっこりと微笑んだ。

「ふっ。そう」
「雑誌に載ってるのとは全然違うぞって言ったんだけど、“わかってる”って言ったから」

Rekiを求めているわけじゃない。
だからってオネエな事を“わかってる”んでもないけれど、彼らは怜自身を見たいと思ったのだ。
だから、皐は彼らを招こうと思った。

「ごめんね?全然雑誌みたいじゃなくて」

笑いながら言った怜に、皐がチクリと言う。

「な?へらへらしてるって言ったろ?」

友人達はそれぞれ、怜にぶんぶんと首を振った。
緊張したまま家に着いて彼らがまず驚いたのは、その豪邸とも言うべき家だ。
圧倒されている内に招かれると、声を聞きつけた王子がリビングから出てくるなり彼らの目の前で怜に思いきり抱きついた。

「怜ちゃん、おかえりー!」
「おっ。ただいま、王子」

怜と同じ白金に輝く髪の少年は、外国の綺麗なアンティークドールの様で、くりっと大きな青い目には憧れや親愛の情が浮かんでいる。
白くほっそりした長い指で頭を撫でると、その綺麗な造形が幸せそうに微笑む。

「ちょっと王子、靴脱ぐから。はーなーれーて」

ぽんぽんと背中を叩く手も、声色も、浮かぶ微笑もすべてが優しく、愛情に満ちていた。

「やぁ」

離れたくないという可愛い我儘は進歩で、怜は嬉しさと愛しさで思わずきゅっと抱き締めた。

キラキラと美しい光景と見たのは友人達だけで、皐はまた刺々しい言葉をぶつける。

「早く上がってよ。後が詰まってんだから」

顔を覗かせた王子は、恥ずかしそうに怜に隠れながら友人達に会釈をした。

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