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番外・過去拍手ほか書庫
夢のような幸せ(真弓×怜)
頼れる胸に寄り掛かり、怜は静かに寝息をたてていた。
しっかり支えて包んでくれる温もりに甘えてすり寄ると、細いウエストに巻きつく腕に力がこもる。
彼の愛情を感じられて、その相貌に自然と笑みが浮かぶ。
はっきり目を覚ましていれば恥ずかしくてとてもいられないが、お休み中の脳にはそんなの関係ない。
本能が求めるまま、彼の愛情の中で存分に甘えて居られる。
そこから先へ考えが及ばないのをいいことに、怜はあごを上げて首筋に顔を埋めた。
くすっと笑う気配が頭上にあって、同時にさらさらと髪が撫でられた。
もっと。とねだるように甘えてすり寄ると、それはすぐに叶えられた。
ぎゅっと抱き締めて、撫でてくれた。

怜はこれ以上ない幸福の中に居た。
とっても幸せで、その幸せを逃したくなくて。その幸せのかたまりに腕を回した。
胸をいっぱいに満たすこの想いを言葉では表しきれない。

ほぅっと吐息をもらした時、ぼんやりと霞がかかったような意識がはっきりとした。
今、寝ながら、自分が確かに息をついたのがわかった。

もったいないと思いながらも目を開けたのは、温もりがなくなってしまっている事に気付いたからだ。
たった今まで抱き締めて、ここで包んでくれていたと思ったのに。
もしかしたらいつの間にか深い眠りに落ちていて、今だと感じたのは間違いだったのかもしれない。
実際には間にもっと時間が経っていたのかも。

目覚めると、怜はクッションを抱えてソファーに横たわっていた。
あんなに優しい温もりが。幸せがクッションに変えられてしまっているのがとても寂しい。

上体を起こして部屋を見回して、自分が彼の家へ来ている事を思い出した。

「あ、起きました?」

キッチンから現れたその人は、にっこりと爽やかに微笑んだ。
それは本当に、いつも通りに。
どれだけ経っているかわからないが、そこにはもうすっかり抱き締めてくれた時の甘さは残されていなかった。
一人だけ置き去りにされたようで、恥ずかしいし悲しい。

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