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番外・過去拍手ほか書庫

「俺は、弟が好きだから」

最初は大概戸惑った。
そういう嘘でごまかすのかと傷付いたり、怒ったり。
やっぱり恋愛には興味が無いんだと落胆したり、呆れたり。
けれど両親が居ない、二人だけの兄弟だからと説明すると大体は納得して黙ってくれた。

「ごめん。今は弟の事しか考えられないんだ。弟にさみしい思いはさせたくないから」

一つ真実を明かすだけで、煩わしい事は減った。
それからずっと、一弥の中で恵が一番であり続けている。


本宅とは別に、一弥にはマンションの自宅がある。
一弥はウォークインクローゼットの一番奥から箱を取り出してきて、大きなガラステーブルにそれを置いた。
箱には一弥の字で、弟の名前が書いてある。

箱を開けると、一弥はふわりと微笑を浮かべた。

クレヨンや色鉛筆の絵、手紙、オレンジ色の折り紙の鶴まで。
中には、これまで恵から貰った物が入っていた。
恵がくれた物は大事に保管している。
あのコスモスも、押し花にして栞を作ってとってある。

一弥は誕生日だからといって特にケーキが無くたってよかったのだが、恵がとても嬉しそうにするから毎回恵の好きなケーキを三嶋に頼んだ。
仕事をするようになってからはそうやってゆっくり恵と誕生日を過ごす事も減ってしまったが、必ずプレゼントはくれた。
ネクタイやハンカチは使っているが、アロマキャンドルは無くなるのが惜しくて一、二回使っただけでインテリアになった。

先日貰った、さみしさと健気な気遣いを書いた手紙を箱に加える。
そして実は恵とお揃いで買っていた小さなサボテンを眺め、一弥は可愛い弟を思い浮かべた。
サボテンはリビングに飾っているが、恵が高校に入学する時に撮ったツーショットの写真は寝室に飾っている。

自分のアルバムは見返す事も無いが、恵のは時々見たくなる。
こうして箱を開けて様々な思い出がよみがえってくると、尚更。

ふたを閉め、一弥はふと思いついた。
今度の自分の誕生日には、恵のアルバムの写真全部のデータを貰おう。
思いついたら誕生日まで待てなくなって、やっぱり三嶋に言ってすぐに貰おうと思った。

一弥は携帯を取り出した。

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あきゅろす。
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