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番外・過去拍手ほか書庫

俺の事故の事で千草に悪い事をしてしまったと言う兄貴達に頼んで買ってもらった物が、今日届いた。

「千草!」
「何?」

千草は読んでいた本を閉じた。

「例のお詫びの品が届いた」
「何を頼んだんだ?」
「いーからいーから!」

千草はまた俺が千草に都合の悪い企みを兄貴としてるんじゃないかと疑っているのだ。

「ちょっと目ぇつぶってろ」
「えぇ……」

不安気な千草を、大丈夫だからと言いくるめて。
それを取り出してセッティングした。

「千草」
「なぁに、まだ?」
「まだ。電気消すけど、落ち着けよ」
「え…っ」
「大丈夫。すぐそこに戻るよ」

こくんと頷くところが、千草が俺を信頼してくれてるんだと感じられて嬉しい。

電気を消してソファーに戻ると、強張った千草の肩を抱き寄せた。

「千草。いいよ。目を開けて」

恐る恐る目を開けると、千草はゆっくりと室内を見回した。

「わぁ…っ。すごい……」

沢山の星が輝いて、天井を夜空に変えていた。

「家庭用プラネタリウム。これで少しは暗いのも平気だろ?」

胸元にぎゅっと顔を埋めてきたから、やっぱり恐がってるんだと思った。

「ごめん。やっぱり、恐いか?」
「ううん。綺麗。すごく……すごく嬉しい」

擦り寄る千草が可愛くて、抱き締めて髪を撫でた。

「千草」

顔を上げた千草は、真っ直ぐに俺を見上げている。
これは、奇跡の様な幸せだ。

唇で軽く額に触れると、千草は照れて目を伏せた。

「好きだよ」

こうして想いを告げられる事も。

「俺も、好き」

こてんと胸に頭を預け、同じく想いをくれる事も。
奇跡の様な幸せだ。

「千草」

体を離して見つめると、千草は困ってうろうろと視線を泳がせた。

「笑って?」
「え?」

きょとんと首を傾げる千草にもう一度言うと、千草はにっこりと微笑んだ。

「可愛い……。ホントに……可愛いね…っ」

幸せなはずなのに、思わず泣きそうになって声が震えた。

「京……?」
「うん。ごめん」

こうして笑顔が見られる事が、堪らなく幸せなんだ。

「千草の、可愛らしい笑顔が好きだ」

ずっとずっと。
俺は千草が好きだった。
千草しか好きじゃなかった。
だからきっと俺は死ぬまで、千草だけを好きで居続けるだろう。

「ずっとずっと、大好きだ」

千草は、両腕を首に回して抱きついた。
キスをしてまた抱きついて、胸に擦り寄りながら言った。

「本物の星じゃないと、お願いしても叶わないかな?」
「どうかな。何をお願いするんだ?」
「ずっと、京と一緒に居れますように。って……」

俺はふと、いつも後をついてきた幼い千草を思い出して可笑しくなった。

「よし。じゃあ願ってみよう。ずっと一緒に居れますように」
「ずっと一緒に居れますように」

願う星は本物じゃなくても、願いを叶える自信がある。

二人が再会出来たように。
想いが通じ合ったように。
それは自然の成り行きで、逃れられない運命だから。


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