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番外・過去拍手ほか書庫
ある日のワンシーン
金色に綺麗に染まった傷みの少ない髪が、白いニットワンピースの上でさらさらと揺れる。
今日発売のファッション誌を近所のコンビニに買いに行こうと思い着替えたのだが、一階へ下りていくとリビングから声がかかった。

「ちょっと待った!」

ラメ入りの濃いピンク色の長財布を手にした怜が振り返ると、下ろした髪がさらりと流れて動く。
なーに?と首を傾げた怜に向けられたのは、眉間にシワを寄せた怒りの表情だった。

「わーお……。ついでに何か買ってきて。って顔じゃないわね」
「あのさ……。どうでもいいけど、そんな格好で外を歩くわけ?」

イライラと腕を組んだ皐に言われるほど酷くはないと思うのに……と自分の格好を見直してみるが、好みの問題かな?と思い付く。

「皐ちゃん、こういうの嫌い?ほら、ちょっとひらひらしてて可愛いでしょー?」

だが逆効果だったらしい。

「可愛いでしょ?じゃない!足を出し過ぎだろう!足を!うわ、しかも生足…!」
「ああ、大丈夫大丈夫。ちゃんと下にホットパンツはいてるから」

そう言ってひらっ、とめくって見せる。

「わかってるわ!それで下に何もはいてなかったら引くっつーの!」
「じゃあ、いいじゃーん。何が問題なのぉ?」

むぅっ、とむくれて口を尖らせると、皐は盛大に溜息をついた。

「恥ずかしくないのか、って事」

そのくらいすぐわかれと言わんばかりの呆れ顔。

「え?何、それは恥を知れ!って事?……そんな!可愛い怜ちゃんを捕まえて…!」

憤慨するのを前に皐の目線がずれて、怜を通り過ぎて背後へ向かったのを気付いた瞬間には手遅れだった。
にゅっと伸びた二本の手が怜の細いウエストを掴み、怜は思わず悲鳴を上げた。

「きゃあっ!いぃやぁああっ。も…っ、誰ぇっ。やだ放して…!」

廊下に座り込み、はぁはぁと息を切らしながら見上げたそこにはケラケラ笑う意地悪な兄。

「それで何処行くって?コンビニならアイス買ってきてよ」
「もー!やめてよバカァ。で、どんなのがいいの?」
「特別に怜ちゃんが選んでいいよ。そのかわり俺のお気に召さなかったらまた腹掴みの刑に処す!」

ニタリと邪悪な笑みを浮かべ、両手を構える望。
立ち上がった隙を突かれるかと思いびくりとお腹をカバーし、警戒心むき出しで望をにらむ。

「何よそれ、めんどくさい!どんなのがいいか言いなさいよ」
「だから怜ちゃんセレクトでいいって言ってんじゃん。ついでに皐のもな。食うだろ?」

両手を構えたままリビングを覗いて皐にも聞く望は、すました顔をして悪魔だと怜は思った。

「うん。俺のも、怜ちゃん。あ、俺も怜ちゃんセレクトね」
「やだ、それって皐ちゃんのお気に召さない場合も罰があるの!?じゃあもし二人共ダメだったら二倍って事!?」
「お。いーね、それ。採用ー。じゃ行ってきてー」


墓穴掘った…!?

自分のミスに気付いても遅い。
物を頼まれた上にそれが気に入らなかったら罰が下されるという理不尽なゲームがいつの間にか開始されている事にふるふると震える。

「ひどい…っ。……ばかぁ!」

叫んで家を飛び出した怜はコンビニのアイスケースの前でしばし悩む事になる。


「はぁーあ。アイツいじめると楽しいな」

そう言って満足げにソファーに座った望を「ひどい」と言う弟。

「失礼な!お前だって参加してたくせに。そもそも俺の愛情表現に込められた怜ちゃんへの愛情とお前のとじゃあ比較にもならん!俺はな、お前が思ってるより遥かに怜ちゃんが可愛い!」

熱弁するのはいいが、日本語の使い方に疑問が残る。
そしてそのひねくれた愛情表現を真っ向から非難出来ない皐は黙って、恐らくどれを買っていけば罰を下されないかと本気で悩んでいるだろうと思われる怜へと思考をシフトした。


「どれ!?どれならお気に召すのぉー!?」

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