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番外・過去拍手ほか書庫
Lovely Queen(弓悠×七瀬)[更新中]
菫谷弓悠。
まず、異様に背が高い。
表情が乏しいという点では新海千草と同じかもしれない。
が、千草の無表情とは違い、彼のそれは仏頂面と言った方が相応しく思われる。
加えて口数も多くなく、意図せず相手に畏怖を覚えさせてしまう妙な迫力が彼にはあった。

嫌われ者ではない。
事実、孤立している訳ではない。
それなりに好かれている。

比較にならないと鼻で笑われる様な二人であろうが、高嶺七瀬は二人は似ていると思っていた。
正しくは、似た部分がある、と。
勿論外見でなく。
感情を内に秘め、一人で居る事に疑問を抱かないところがだ。

二人への周囲の対応の違いは、容姿の違いが大きな理由である事は間違いない。
しかし、明かな違い。
千草は自分を守る為に本能的に心を閉ざし、その原因となった深い傷が影を落としていた。
果敢なげで、何処か謎めいて、惹かれる。

弓悠は、心が壊れてしまう程の傷を知らない。
持っているのは、独りで居る事が苦痛ではなく、他人の評価などにさして価値を感じない、自分を貫ける強さ。
トラウマが原因とはいえ、独りで在り続ける千草のそれも、ある意味では強さと言える。

千草が触れ難い高嶺の花なら、弓悠はそこに在っても気に留められない草だ。

七瀬はその二人共が気に入っていて、好きだった。
その感情の正体を、七瀬は自分でわかっている。


色素が薄い七瀬の髪は明るい色をして、それは瞳も同じく。肌はやや白い。
中性的とは違うが、整った顔立ちは綺麗と言って相違ない。
柔らかな微笑が似合い、物腰の優しい。
背もあり、成績もよく、生徒会長を務めている。

嫌味な程に欠点の無い完ぺきな人物と思われるが、実際には完ぺきでは当然ない。
気分屋だったり、いい加減な一面だったりを持ち合わせている。
容姿や成績などの評価は上辺だけのもので、人間性に惹かれて七瀬の周りには人が集まる。
その一番近くに居るのが弓悠であり、その誰よりも七瀬を理解していると弓悠は自負していた。
そして七瀬も弓悠がそうである事を確信し、信頼していた。


後輩が見たら泣くぞと指摘されたのは何でもない、ただ机に突っ伏しているそれだけの事だった。

「なーにがー?」

気の抜けた答えに一人は肩を落とし、一人は態度を改めさせようと立ち上がる。

「天下の七瀬様がそんなでどーする!もっとホラ堂々と!」
「シャキッと!」

一人に同調して増えるのが鬱陶しく、こちらの都合を説明するのも億劫になった。
が、このままでは引きそうにないと悟り、渋々頬杖に改める。
それでも満足ではないらしく、集まるメンツの納得も同様に渋々だった。

「今は生徒会が暇なんだよ。なーんか気合い入らなくってねー。だらけるよねぇ?弓悠?」

味方を増やそうと試みるが、目を合わせるだけで何も発さない。
ばかりか、相手方に引き入れられんとしている。

「同じ生徒会でもチカはだらけてねーだろう。なぁチカ!?」

ユミチカの四文字が長いという理由で略された愛称が定着したのはいつからだろう。
けれど俺は、ちゃんと弓悠の名前を呼びたかった。
名前ぐらい略さずに呼べばいいと思うのもあるにはあるが、一番はやはり、好きな人間の名前だからだ。

「常に完ぺきを求められる俺の憂いが君達にわかるか!?ああ、可哀想に俺!」

ガバッと跳ね起き、両手を広げオーバーアクションで訴える。
芝居掛かったそれも見慣れたもので、またやってると失笑を買って終いだ。

案の定、この話題は終結に向かって終いになる。

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