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番外・過去拍手ほか書庫
一家団欒
一家団欒とは正にこの事だと自信を持って言える夜の一時をリビングで過ごしている一家。

ソファーの真ん中をぼすぼす叩いて「ここに座りなさいな、怜ちゃんや!」と不思議な口調で王子が素敵な笑顔を振りまき、喜んで座ったのは怜だ。

「可愛いわぁ、王子」

横から抱っこ、と見せかけてだらりと寄りかかる。

「王子が潰れるぞ、オネエ様」
「おやおや、のんちゃん。嫉妬は醜いよ」
「あら、パパこそ」

家庭内で愛憎渦巻くとでも言うべきか。
行き過ぎではないかと思われる程の愛情をもってなされる会話は常で、それがこの家庭特有なのはそれぞれが十二分に承知している。
そもそも未だに新婚並みのお熱い関係で居られるこの両親の「家族」に対する強い想いに起因する。
上は二十七。続いて二十五、二十四と、経済的にも独立が可能な息子達を泣いて引き止める両親。
執着とも言えるその想いを感じているから兄弟は納得して受け入れている。


「怜ちゃん、俺トイレ行きたい」
「ちょっ、何で名指しで報告すんのよ」

行きたいなら勝手に行けばいいじゃない、と思わず笑わせられながらのんちゃんに言い返す。
なのにサラリと「そこの醤油取って」と同じ様な調子でふざけた事をぬかす。

「行ってきて」
「出来るか!アンタ王様か!」

我儘な王様がトイレに行きたくなった時にまで家来に行ってこいと命じたっていう滑稽な童話を彷彿とさせた。
へらへら面白がって笑いはしても動く気配は無く、冗談かい!と内心でツッコむ。

「じゃあ皐が行ってやれ」
「悟兄こそ行ってあげればいいじゃん」

何このやり取り。
日常的な会話よろしく然り気無い空気で交わされるふざけた会話。
こんな調子で冗談を言い合う家庭が果たして他にあるのだろか。

誰もツッコむ事なく、母さんが皆に何か飲む?とそれぞれのリクエストを聞いてキッチンへ。
さっきまでのおふざけの終止符は打たないままなのか気にかかりはするけれども、何事も無くお茶やジュースをそれぞれが口にする。


「怜ちゃん、おかわり」
「だから、何で名指しなのよっ」

飲み干したコップを差し出したのんちゃんはまだふざけるつもりらしい。
つい吹き出しながら言うと、母さんが腰をあげる。

「またオレンジジュースでいーい?」
「あ、ううん。嘘。もういい」

やっぱりまた冗談か、と同じ考えが浮かんだらしく、皆が吹き出してしまう。

「怜ちゃん」

最早こうなったらのんちゃんに呼ばれるだけで可笑しくなってきて、家族全体が妙なテンションになってきて笑いに包まれる。

「小腹すかない?」

言う方もケラケラ笑っちゃってるし、先読みした皐が代わりに言う。

「代わりに食ってきてだって」

ひとしきり笑って気が済んだのんちゃんは、おもしれっ、と呟いて席を立った。

「トイレ行こ」

一通りふざけたけど結局自分で行くんじゃないのよ、と思ったらまた可笑しかった。
普段がこんなんだからのんちゃんはふざけたイメージが強い。
だからこそ余計に仕事でのビシッとした一面に驚かされる訳だけど、これをファンの人が知ったらどう思うのかしら、と単純に興味がわいた。

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