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短篇
天空月下
地上に住むしがない作家には、新世界で大きな役目を担う彼女を幸せには出来ない。

僕は街から離れたこの草原の古屋でペンを走らせるしか出来ない男だ。
それも結果が伴うともわからない空想の物語で、この文明が発展した物質主義の世界には到底受け入れられ難いのではないかと思う。

それでもそんな空想を作り続けているのは、僕がそこでしか生きられなくなってしまったから。
でも僕は君を守れるならそれを手放したっていいと思っているんだ。

そう言ったら彼女は、捨ててしまったら死んでしまうんじゃない?と笑い飛ばした。
君は何でも見通しているのかな。

でもね。
少しは僕にも甘えていいんだよ。
お金があるわけじゃないし、有名なわけでも偉いわけでもない。
君を守るにはひどく頼りない男だけれど、僕は本当に君を守って生きたいんだ。


空が真っ青で、少し強めの風が草原を翔る。
ここから君の旅立った月は、新世界はまだ見えない。
君はそこで強く在ろうとしているんだろう。

僕に少しでも力があれば今すぐにでも君を抱き締めに行くよ。
君はそれを僕の甘えだと突き放し、振り返らず新世界で戦い続ける。
そんな君の行動ぐらい僕にだって見通せるんだよ。


君は新世界の国民の為に必死に権力と戦っている。


何も知らせず君が突然地上に帰ったのは、君が旅立った日と同じ強めの風が吹いた日の事だった。
僕はあまり驚きすぎて落としたコーヒーカップに構わず君を抱き締めた。

戦いぬいて新世界で勝ち得た栄光をなげうつ価値が僕にあるんだろうか。
でも、君を守る事が僕の幸せだよ。
君が迷惑でも、僕は君を想い守り共に幸せを生きていきたい。

君を愛させてはくれないか。



強めの風が翔る草原で、はしゃぎまわる僕達の愛情。

現実を噛み締めて、僕はまた君や君へ。
そして自身へと空想を創り放ち続けていこう。
そうして生きる僕はそうして生かされ、そうして生かす僕はそうして生きた。

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