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短篇
12
焚き火を囲んだ宴会にまじり、マリーは興奮気味に話すメンバーの話を聞いていた。
そこでようやく、町のギャングが銀行強盗を起こしたと知った。

「銀行……。あっ、そっか。北の……」

予言で視えた北の施設というのが銀行だったのだ。
ギャングがたまり場にしているのが東の廃墟ビルで、最近何か荷物を運び込んでいるという情報がキャッチされて警戒されていたところだった。
それで今日、ギャング達の動きが活発になっているのを怪しみ動くかどうか話し合っていた。
そこに予言がもたらされたのだ。

「西の方角で助けになるっていったら警察だって気付いて、まず通報したんだけどね」
「怪しいってだけじゃあ警察は動いてくんないのよ。何か起こってからじゃないと」

だから俺達が居るんだけどね。と、彼らは誇らしげに言った。

北にある施設で、人が集まる場所。ギャングが狙いそうなところと考え、銀行に目星をつけた。
側に隠れて見張っているのとは別に、予言通り廃墟ビルにも見張りを置いた。

「そしたらそこが、爆発したんですよ」
「予言を聞いてたから人が近付かないようにしておいて、ホントよかったです」

マリーは息を呑んだが、巻き込まれた人が居ないと聞いて安堵した。

「奴ら、アジトで爆弾つくってたんです。扱いをしくじって、爆発させちまったんでしょう」
「それがわかって、すぐ警察に通報しました。それでやっと動いたってわけです」

だから強盗が発生してすぐに警察が駆けつけられた。
そんなに早く来ると思わないギャング達はあっさり捕まったが、そこに爆弾が持ち込まれていたのだ。

「爆弾があるなんて知らずに自分達だけで突っ込んでたら、本当に危なかった」
「ケガだけじゃ済まない。お嬢様は命の恩人ですよ」

メンバーは口々にマリーに対して礼を言った。
けれどマリーは首を振る。

「私はただ、ぼんやりとした道筋を視ただけです。実際に行ったのは、すべて皆さんです」

祈るように指を組んで話すマリーが、謙遜ではなく、本心からそう言っているとわかった。

「皆さんが居なければ、私だけではどうにもならなかった事です」

予言の内容が幸せなものとは限らない。
そしてその結果がうまくいくとも限らない。
だからすべてうまくいったのは、そうなるように頑張った彼らのお蔭なのだ。

マリーは口を押さえ、くあ〜っとあくびをした。
クライヴは隣でそれをくすりと笑う。

「お疲れでしょう」
「ん……ごめんなさい……」

マリーは眠そうに瞬きをして、ぼんやりと答えた。

「皆さんの方がきっとお疲れなのに……」

こんな眠い時でも、マリーは他人のことを気にかける。

「いいんですよ、俺達は。気にせず休んでください、ね?」
「……はい」

マリーは席を立つと、ちょこんと膝を折って挨拶をした。

「お休みなさい」

ばらばらに重なる挨拶に遅れて、クライヴが言う。

「お休みなさい、お嬢様。また明日」
「ええ。お休みなさい、クライヴさん。また明日」


完成したマフラーを抱え、マリーはベースを訪ねた。
ノックをして人が出てくると、胸に抱えたマフラーをぎゅっと抱え直す。

「あの……。クライヴさん……居ますか?」

消えそうな声でマリーが言うと、相手の視線がちらりとマフラーへ下り、戻る。

「ちょっと待ってください。……クライヴ!」

奥から彼の声が聞こえて、更に身を堅くする。

「何だ?……お嬢様…!」

クライヴの背を叩いたそのメンバーは、ニヤリと笑って引っ込んでいった。
あの……と言いかけたマリーの言葉を遮って、クライヴはメンバーの視線を気にして外に出た。

「行きましょう。ここは騒がしいですから」

こくりと頷いたマリーの背にそっとてをそえて、クライヴは桟橋の先へ移動した。
そしてクライヴは、どうぞ?というようににこりと微笑んだ。

「あ、あの……。これ」

震えそうになるのをごまかすために、声が小さく細くなる。

「季節外れですけど、クライヴさんに。と、思って……」

そっと差し出して、はたと気付く。
思えば、これは手編みのマフラーだ。
いくら気持ちが通じあったと思えた相手でも、重いプレゼントだと嫌われやしないかと気付いたのだ。
不安になって、消えそうな声が更に尻つぼみになっていく。

「編んだんですけど……。もし、よければ……」

自信が無くてうつむいてしまったマリーに、優しく声が降る。

「もちろん、喜んで。いただけますか?」

そろっと上目で窺った先に、甘い微笑みがあって、マリーも顔をほころばせた。

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あきゅろす。
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