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短篇
天狗
御寺の一人娘。

それが彼女の肩書きで、俺とは身分が違う。
世間の目を避け人気の無い空き地で逢瀬を重ねた。

掌を広げ指先に息を吹き掛けると自由に空中を翔る事が出来る。
恐れられる天狗にも彼女は笑顔で話してくれる。

彼女の家である寺は朱の色で長い石段を登った山の上にある。

「何しに来た!!」

寺へ入ると御父上である住職殿が怒鳴った。
彼女を幸福にする為にはお許しを頂かねばならない。

誰も俺たちを知らぬ町で新たな人生を送る事も頭によぎった。
でもそれじゃあ彼女が幸福にはなれない。

許されぬ命を送る事が、彼女が心から笑む事を阻む。

許しを貰えぬ申し訳なさから目を合わせずらくなりつい伏し目がちになる。
その様で悟った彼女は何も口にせず外方を向く。

まだ君を心から笑顔にさせる事は出来ない。
なのに君が涙を見せない事が心苦しい。

幸せになろう。
簡単な事じゃないけど。
きっと心から幸せに為ろう。

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あきゅろす。
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