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短篇
20
エリスの友人ともなると、気軽なホームパーティーのレベルが違う。
プール付きの豪邸にゴージャスな人達が集まる。
女性は皆スタイルがよく綺麗な人ばかりで、体型を強調するドレスに身を包んでいた。
それは自信に溢れて見えて、みこの目にはかっこよく映った。

最初に出迎えてくれたホスト役のルイス・ミラー氏はエリスと同年代で、新進気鋭の映画監督として期待されている人物だそうだ。
彼はみこを「ミステリアスなプリンセス」と称し、今日のスターになると予言した。
謎めいたエリスの恋人について知りたいのは身近な知り合いも同じらしい。
とはいえ。みこ一人だけ子供が紛れこんだようで、自分は場違いだと本人は感じていた。

「みこ。平気?」
「はい。でも……」

エリスは調子を崩してないか気にかけて何度も確認した。
そうしないと我慢して隠そうとすると知っているからだ。

「なぁに?」
「女性の皆さんがかっこいい方ばかりで……。私は子供っぽいから、恥ずかしいです」

エリスがくすくす笑いだすと、みこはじわりと頬を染めた。

「君のどこが子供だって?僕はそんな趣味ないんだけどね」
「そっ、そんなつもりじゃ…!」
「いいよ。わかってる」

エリスにすれば、冗談を真に受けて慌ててしまうところが可愛い。

「確かに君は年齢よりずっと若く見えるね。だけど僕は知ってる。君は子供の頃から大人と一緒に働いていて、早く大人になってしまった。家庭環境がそうさせてしまったというのもあるだろう。そんな君を子供だとは思わない」
「……はい」
「それに、つらい思いをたくさんしてきた。それでも一生懸命、自分の力で立ち続けようとする強さを君は失わない。君は心を消耗させすぎたんだ、みこ。そのせいで今少し臆病になってるだけだ。恥じることはない」

泣きそうなのをぐっとこらえ、ぱたぱたと両手で顔をあおぐと、またエリスがくすりと笑う。

「大人でも泣きたい時は泣いたっていいんだよ?」
「やめて、言わないで。我慢してるのに。泣いちゃう 」

からかって楽しむエリスを止めてくれたのは、ホスト役のミラー氏だ。

「恋人同士の秘密の会話中悪いね。お邪魔するよ」

日本語で話していたので秘密の会話と言われても仕方ないが、よくない印象を与えていたら申し訳ないという気持ちになる。
だから臆病になって、口をつぐんでしまう。

「女性に聞かせられない秘密の会話を、男同士でしようじゃないか。女性達も同じ意見なようだよ」

ミラー氏の視線につられて顔を動かすと、女性二人がすぐそこに居た。

「私達も男性には聞かせられないガールズトークがあるの」
「行きましょ」

するりと絡みつく腕が有無を言わせぬ強引さを感じさせる。
不安を覚えてエリスを見ると、安心させられるあたたかな微笑みがあった。
勇気づけられて笑みがにじむと、それでいいんだというようにエリスがこくりと頷く。
こんなところが子供っぽく映るのだと気付いても遅い。

暖色系の明かりが灯る広いサロンは、落ち着いた大人の雰囲気だった。
気の合う者とかたまり、いくつかのグループに別れて好きに過ごしている。
みこはプールに面したソファーに導かれるままおとなしく座ったが、そこからはプールサイドではしゃぐ何人かの女性が見えた。
金髪を巻いたゴージャスな女性と、栗色の髪の女性に挟まれて、もう自分が何処に居るのかわからなくなる。
ちょっと前までは日本に居て、家から出るのも恐がっていたというのに。

「英語はわかるの?」
「はい。ちょっとだけなら」
「よかった。私達は日本語がわからないから。あなたとお話ししたかったのよ」

理知的な、かっこいい人達。
エリスと離されることに不安を覚えたが、彼女達を恐がることはないのだと悟り、少し緊張がほぐれる。

「彼女ね?」
「エリスのひよこちゃん」

部屋の奥のテーブルから移ってきた数名が加わり、ソファーが埋まる。
どうやら固定された人物同士でかたまっているのではなく、部屋の中ではあっちこっち行ったり来たりして自由に交流しているらしい。
プールサイドではしゃぐ人達だけが別なようだ。

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