ドラゴン 2 夫婦が部屋へ戻ると、カーテンがばたばたとはためき、開いた窓から雨が吹き込んでいた。 「大変!」 窓際に置かれたベビーベッドで、我が子が雨に打たれて泣いていたのだ。 妻が急いでかけ寄って抱き上げると、夫は窓を閉めてから使用人を捜した。 「何てことだ!」 使用人はバスルームで縛られ、タオルで猿ぐつわをされて倒れていた。 意識は無いが、息はあるようだ。 夫が拘束を解いていると、妻の叫ぶ声が夫を呼んだ。 夫が駆けつけると、妻は赤ん坊を抱いてベッドの傍らで座り込んで泣いていた。 まさかと思い抱えられた我が子を確認したが、赤ん坊には何処も怪我は無い。 そして、気付いた。 「もう一人は……?」 ベビーベッドが一つしかなかったから、もう一人はベッドに寝かせておいたのだ。 使用人が別のところに移したのかと思い捜したが、屋敷中を捜しまわっても赤ん坊は見つからなかった。 意識を取り戻した使用人は、突然窓から侵入してきた男達に襲われたのだと言った。 意識を失う前に聞いた会話の内容を聞いて、夫婦はその意味がわかった。 『おい、どっちだ!?』 『石だ!子供に石を近づけろ』 『見つけた!こっちだ!』 一族にこの事件が知らされると、夫婦は子供を渡すのが嫌で隠したんだろうと疑われた。 誘拐されたのが『御子』と認められた方の子供だったからだ。 だが屋敷の使用人や他の目撃衝撃から、夫婦の疑いは晴れた。 当主は、陰謀だと断言した。 これは大国の陰謀だ、と。 御子を奪われた一族は、やがてゆるやかに衰退していった。 [*前へ][次へ#] |