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Desert Oasis Vampire

応える事は出来ないと言うと、意外にも客人は笑った。

「なら話は信じてくれたのか?」

そんな事で喜ぶのか。
応えられないと言ったのに。
無言でいるのをイエスだととったらしく、にこにこと笑う。

「まさか初めから信じてもらえるとは思ってなかったなー」

だろうな。
正直今だって半信半疑だ。

「なら、これからいくらでもチャンスがあるって事だな!」

この男は一体何を聞いていたのか。
それに、いくら大切だった人の生まれ変わりだとしても今は別人なんだし、それでいいのか。
もしかしたらそれほど大切だったのかもしれないけれど、別人な事には変わりない。
もう大切な人は居ない。

「貴方はそれでいいのか」

大切な人を追って、もう想ってはくれない別人にその影を見る。

「だからこれからグレンをもっと好きになる」

その人の生まれ変わりなら、別人でも好きになってみせる?
好きになれる?

「聞き方を誤りました。貴方はそれで幸せなのか?」

二度と戻らない。
これからも同じものは決して手に入らない。
それでも影を追うのか。

目を丸くした後、客人は顔をほころばせた。

「グレンが心の美しい人間でよかった。グレンでよかった」

安心した様に言った彼は、本当にその人が大切だったんだと思わせた。

「グレンに惹かれていなかったら、そもそもグレンの前に姿を現す事もなかった。最初からそのつもりも無かったんだからな」

きっかけはどうあれ惹かれたのには違いない。
だから運命だと言い張る彼に、黙って聞いていたローザが睨んで言う。

「だぁからグレンにはそんな趣味無いっての!勝手に好きになってるだけで満足、って言っても私が許しませんから!」
「何の権利があって禁じられねばならないんだ!関係ないだろ!」
「関係大有りです!わ・た・しの権利よ!あと水をさすようで悪いですけどね、グレンがその生まれ変わりって証拠が何処にありまして?」

何だか反りが合わないらしい二人はそうやって言い合い、それからローザは勝ち誇った様に高笑いをする。
しかしそれがピタリとおさまったのは、客人の告白を耳にしたローザが固まったからだ。


「今何とおっしゃりまして?まさかこのお屋敷に、このグレンの前に……。もし貴方が本当に“そう”でしたらですけれど?……現れていいわけが、ありませんわよね!?」

興奮すると冷静になろうとつとめるのか、口調が丁寧になっていくローザ。
信じたくないなら別に信じなくたっていい、と言う彼が“そう”だったとは。
改めて耳にすると現実感がなくてろくに反応出来なかった。

『悪魔に呪われた子』
そう聞かされてきた。


「グレンの過去に悪魔が関わったかもしれないってのはわかってる」

わかってるなら何故、と噛みつくローザに構わず目を合わせて言う。

「だからこそ俺ならグレンの為になれると思わないか?同じ悪魔の俺なら」

あとは彼を信じるか否かが問題。
信じずに追い返す事は出来るけれど、それがかすかな望みであっても信じてみるのも一つの手じゃないか。
過去について、真実を知るチャンスになるかもしれない。

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