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シリーズ・短篇
12
コツコツとガラスを叩く音がして、そちらを向くと外にその人が立っていた。

「藤堂さん…!」

せめてもうちょっと自分の中で整理してから会いたかった。
藤堂さんは、僕が待たせるのが好きだと言うけれど、いつも藤堂さんが早急なのだ。
びっくりして立ち上がると、彼氏?と口パクで確認されて、頷く。

窓を開けると、不機嫌な声が降ってきた。

「お前、なに男どもとイチャついてんだ。油断ならねぇな」
「やめてよ!そういう事言うのっ。わかってるくせに…!」

僕がまだ、人とうまく関わることができないってわかってるのに。
人を好きになるなんて、藤堂さん以外あり得ないとも。
だから藤堂さん以外とべたべたするなんて不可能だともわかっているのに、意地悪を言って遊ぶのだ。

「今日はお前の引っ越しだから迎えに来るって言ったろう。外で立っとけって」
「そうだ、ごめんなさい。もう時間?」

今日、僕は藤堂さんの家へ引っ越す。
マンションの最上階ワンフロアが藤堂さんの自宅で、とてつもなく広い。
お前のことは俺が決めると言った通り、越してこいと言われて決まってしまったのだ。

「すぐ行きます」

それから質問に答えてくれた彼らに礼を言ったら、藤堂さんがじろりと睨んで威嚇をするのでやめてほしい。

「お前にもやっとお友達ができたか?」

僕には浮気なんてできないっていうのに、わざと“友達”と強調して予防線を張るのをやめてほしい。
それに今まで友達と呼べる友達が居ないと知られるのも避けたかった。
恥じるより、過去の自分の生き方に罪悪感を覚えるのだ。

「やめてってばっ。言わないで」

窓を閉めるのに押しやってもびくともしない。
またニヤニヤして楽しんでいる。
藤堂さんは嬉しいんだろうが、僕は馴れないからどっとつかれてしまう。

「あんまり意地悪しないでください。ほら、閉めますよ?」

窓を締めてひとまず息を吐く。
“彼氏さん”のイメージが違ったのか、すごい人ですね。と圧倒されていたが、頑張ってと応援してくれたのがとても嬉しかった。

今、こうして幸せを感じるのは、藤堂さんのお蔭以外あり得ない。
思い悩むことでさえ、藤堂さんが与えてくれたものだ。
だから。
これからの僕の人生は、すべて藤堂さんのためにあると言っていい。
藤堂さんが「俺のものだ」と言ってくれる限り、僕は藤堂さんにすべて支配される。
それを、とても幸せに思うのだ。

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