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シリーズ・短篇

相対する二つのグループ。
クラスメイトにかばわれて、慰められているその小さな人は、もっとちっちゃくなってぐしぐしと泣いていた。

「何してるんですか?」

その声を聞いて、そしてその人を見て。先輩と共に芳海まで凍り付いた。
迷惑を掛けてると知ってしまったから、顔を合わせるのがとても後ろめたかった。
みっともない泣き顔を見られるのも恥ずかしかったし、うつむいたままそちらを見なかった。

クラスメイトはすぐに告げ口はせず、先輩達に視線を送り判断を任せた。

「どうしたんですか?」

構図的にどう見ても先輩が一年を泣かしてるようにしか見えないので、人見はクラスメイトではなく先輩に向かって聞いた。
気まずい沈黙が流れ、待ってられなくて先に芳海のフォローに回る。

「大丈夫?」

人見が側へ寄って手を伸ばすと、芳海は怯えた様に縮こまって半歩後ずさった。
避けられた……?
それなら無理に触れられない。

そこに居た面々は、人見が中に浮いた手を握り締め、ぐっと歯を食い縛ったのを見た。
誰も口にはせず、さっと目を反らし見ない振りをしたが、人見がショックを受け胸を痛めたのはわかった。

「……何なんですか?」

沈んだ声に混じる怒気。
説明しろ。と、その目が訴えていた。

「ごめんね……。何か、人見君も“そう”だとは思わなかったから……」
「うん、ごめん。私達ホントに、人見君が被害者だと思って」

ちらりと動いたその視線の先を察し、何となく事態を把握した。
こんな騒ぎになったのだし、知られたなら構わない。
ごまかすべきではないと判断した。

「それを言うなら、俺は加害者の方ですよ?」

片頬で、自嘲を漏らす。

「最初に目をつけたのは俺ですからね」

クラスメイトは笑みを浮かべて嬉しそうに目配せをしたが、先輩達は絶句するしかなかった。

「何て思ってもらってもいいです。裏切られたと思っても、気持ち悪いと思っても。俺は何でもいいんですけど、“そういう”事ですから……」

人見は、その小さな人を一瞥した。

「……お願いします」

多くは語らなかったが、先輩達は納得して了承した。
二人の仲を邪魔しないでほしい。
この子を傷付けないでほしい。
その願いが伝わったから。

「わかった。ごめんね?」

先輩達は何度も謝って、そして一年の女子達へも歩み寄った。

「ホントに身近にそういう人が居るって知らなかったから、ちゃんと真面目に考えたコトなかったわ」
「そうだよね。そういう人達も私達とおんなじで、真剣なんだもんね……」

双方和解したが、芳海は謝られてもまだ訳がわからず混乱していた。

「大丈夫だよ?」
「後は人見から聞きな?」

芳海を慰め、後は任せたというように寄越された複数の視線に頷いて、人見はそっと呼んだ。

「水上」

ひくん、と一つしゃくりあげる。
それが可愛そうだったけれど、同時にとても愛しくて抱き締めたくもなった。

「ごっ、ごめんね……?僕が…っ」
「ん?」

人見は自分のシャツの袖を引っ張って、ほら。と頬を拭ってやった。

「人見君に、迷惑……」
「それは違うんだよ。行こう。ちゃんと話すから、な?」

芳海に向けられる声色は甘く、視線は愛情に満ちている。
クラスメイトのれみ達は、これをしばしば間近で見て知っているのだ。
最初はリアルBL!?と浮かれ、二人をけしかけて楽しんでいたが。そして今もその気持ちは若干あるが、決して面白がって嘲笑ってるわけじゃない。
友達として二人を応援しているのだ。

れみ達は、二人がうまくいくようにと願ってその背中を見送った。

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あきゅろす。
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