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シリーズ・短篇

「何で?女子にだって羨ましがられると思うよ?自慢になるよ」

手を放してくれたので急いで髪をなおして隠して、ぶんぶん首を振って断る。

「いや、なの……」

目が大きいねとよく言われた。
人見君が言う通り、女の人に羨ましいとも言われた。

「目が、おっこちそうねって。手で、こうして……」

“こう”と、目の下に手を持ってくる。

「こぼれちゃいそうって、言われた……」

悪意は無いと理解できた。
けれど、遊ばれたようなからかわれたような、ショックを受けたのだ。

「冗談で、でしょ?羨ましかったんだよ。だって目を引くし。その人も悪気は無かったんじゃない?」

わかってる。
わかってるけど、幼かったし、人に目の事ばかり言われていたから敏感になっていたのだと思う。

「うん……。だけど、びっくりして……」

そのくらいで、って思う。
だけど。

「何か……悲しくなっちゃって……」

膝の上で、指先を落ち着きなくくるくる絡める。

「それで気にして今まで隠してたの?」

もったいないと呟く言葉は、とても優しく穏やかに届いた。
人が苦手であがり症なのは元からだと思ってたけれど、幼い頃のそれが更に苦手意識を植えつけたのかもしれない。

「自信持ちなよ、って……俺が言ってもしょうがないと思うけど。全然気にしなくて大丈夫だよ?」

人見君の言葉がお愛想に聞こえないのは、その人柄のせいだと思う。
穿った見方をせず、卑屈にもならず、素直に言葉のまま聞ける。
だから素直に、ありがとうも出てくる。

それから人見君はお昼も誘ってくれて、体育でも混ぜてくれたお友達と机を寄せて一緒に食べた。
皆が会話に混ぜようと沢山話し掛けてくれるのに、うまく答えられなくて焦る。
それがまた動揺を呼ぶという悪循環。

「ご、ごめん、なさぃ……。僕、話すの、苦手で……」

羞恥で目が潤み、熱くなった頬を手で押さえる。

「じゃあほら、必殺技いこうよ!」

その提案は応援でもフォローでもなく、ぼけっとしている隙の行動はただパニックを招くだけだ。
人見君が隣から手を伸ばし、前髪をわけてしまったから。

「やっ、いやだぁ…!やだよ、放してっ」

人見君の手を叩いてしまったのが気になったけれど、それよりも急いで髪をなおす。

「どうして…っ」

嫌だって話したのに。
そりゃあ事前に言われていたって心の準備など到底できず、心が決まらないだろうけれども。
それでも苦手だって言った事を不意打ちでするなんて、心臓に悪すぎた。
恥ずかしいし、恐いし、動揺して涙が溢れそうだ。

「うわっ、何今の…!」
「もっかいもっかい!」

面白がってからかわれるんじゃないかって恐くて、うつむいてぎゅうっと体を強張らせる。

「なっ!?可愛いだろ!?」

そう言ってくれるのは人見君だけだ。
そう思ったのに、まさかの同意が返ってきた。

「目ぇ、でっか!」
「何その漫画みたいな展開!今めっちゃ可愛い顔出てきたけど!」
「メガネ取ったら美人、脱いだら巨乳みたいな!」

驚きの声は関心を引き、何々?とクラスの視線を集めだす。
人見君はまた顔を覗きこんで、な?と微笑んだ。

「隠すことじゃないって。大丈夫だよ、誰もイジメたりしないから」

どうしたらいいかわからなくて、髪を押さえながら小声で人見君にすがる。

「でもっ、でも……恐い……」

怯えてる間にもお友達が話して広がっていく。

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あきゅろす。
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