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シリーズ・短篇

高校デビューに失敗し、夏休み明けの二学期デビューにも失敗した僕は、相変わらず一人だ。
話し掛けられないこともないけど、会話とも言えないレベルくらいしか人との接触はない。
その原因は、自分にある。
話し掛けられるとあがってしまって、何度も噛んで言葉に詰まり、羞恥と焦りで余計に喋れなくなる。
幼い頃はそれをからかわれて笑われた事もあって、畏縮して内向的になり、次第に口数が減っていった。

話し掛けられて醜態をさらすと人を不快にさせたし、恥ずかしくて見られたくなくてうつむくようになった。
家族には切るのが面倒なだけだと言いながら、顔を隠すのに髪をのばした。

元から真面目でつまらない奴だと言われていた。
地味でおとなしい方だった。
だからネガティブな自分がより暗く、不気味で気持ち悪く仕上がるのも元が元だったのだと諦めがつく。
というより身の程を知ったというべきか。
立場をわきまえてるというべきか。

高校に上がるとさすがに成長するのか、それともたまたま人に恵まれたのか、中学の時の様な嫌悪や侮蔑はぶつけられなかった。
それを思えば、誰にも相手にされず孤立してるくらいずっと楽だ。
このままではよくないと薄々思いながらも、変化を恐れて自分を変えられず、現状に甘んじている。
それを認識してもなお、楽で平穏な位置に甘えてるから質が悪い。
人が見向きもしないのも当然だ。

だらしなく伸ばした髪で視界を覆う。
プールではさすがに鬱陶しいので諦めるが、乾くまでしばし視界が開けたままなので、そこを我慢せねばならないのが苦痛だ。
無防備な気がして不安なのだ。
女子みたいにドライヤーで乾かすのも恥ずかしいし、それを考えたら肩にタオルをかけて次の授業を受けるのなんて全然問題ない。

それにしても、プールの後って何故こうも眠くなるのだろう。
眠くてぼーっとして、何も考えず邪魔な前髪を両手でわける。
あ、乾いてきてるな。
そんな事しか思わなかった。
ふわぁっとあくびをして、重いまぶたと戦う。
授業中に何度か記憶か途切れたので、恐らく何度か寝たかもしれない。

次の体育は、二日後の四時限目だった。
雨が降ったのでプールは中止。
体育館でできる事なら好きな友達と何でもやっていいという、友達ゼロの人間にとって酷なお触れが出た。
プールは泳いでればいいのでよかった。
自由時間になって皆が遊びだしても、貧弱で青白いので、疲れて休んでいても怒られなかった。

同級生みたいに背もそんなに伸びなくて、百七十にも満たない。
いや、見栄を張った。
百六十をやっと越えたところだ。
自分よりも背が高い女子も居るし、一人だけ中学生が混じってるみたいだ。
でもまだ伸びるはずだと僅かな希望は捨てていない。
捨てていない……のだけれど、あくまで希望はほんの僅かだ。
父似の姉や妹は背が高いのに、男の僕だけ母に似てちっちゃい。
体つきも細くて貧弱だし、見た目も中身も子供っぽいと姉ばかりか妹にまで言われる始末。
祖父母には女兄弟に挟まれて育ったから気が優しく、穏やかになったと言われるが、我が家の女性陣は気が強く勇ましい。
おとなしいと言われるのは、それもあるのかもしれない。

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