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シリーズ・短篇

警戒心を隠すことなく、噛み付きそうな目で睨み付ける子供だった。

『群から逸(はぐ)れた狼の子供』
それが俺が抱いたあいつへの最初の印象だった。

まだ幼い子供は一人、酷く傷付き誰も信じられず。
怯えるほどに牙をむいて人を遠ざけ、確保した安全は同時に孤独を招き。
その心を尚更に衰弱させていく。悪循環。

それが狼にとって一番の安全な策だった。
誰も近付けない事が傷付かないための一番の近道であり、出来る精一杯の方法だった。
けれどどこかで、それを破って来る信頼に足る安全な存在を待っても居たのだろう。

見ていてどこか腹が立つのは、そんなあいつが自分に似ているからだろう。
そして、群から逸れた狼を思わず拾ってしまったのも恐らく同じ理由だ。

だが思いの外懐かれ過ぎてしまったのは誤算だった。

今や孤独な一匹狼からよく吠える生意気な犬になったあいつは、ほぼ俺が養っているようなもんだ。

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あきゅろす。
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