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シリーズ・短篇

“お友達”とベッドに入ったエヴァンの額を撫でて、ジェシーはおやすみの前に翌日の来客を知らせた。

「覚えてるだろう?ダレル。彼と、彼の婚約者が来るんだ」

不安を滲ませたエヴァンは、くまをぎゅっと抱き締めて耳を傾けた。

「僕は君を助けた人間として、親戚として、君が安心して暮らせるように責任を持つ。絶対だ。それはこれから先も決して変わらない。決して」

いつも穏やかな雰囲気をまとうジェシーが笑みを消し、真剣にその覚悟を訴えていた。

「そのためには、人の助けが要ることもあると思うんだ。ダレルとキャシーにはその助けになってもらいたいと思ってる。彼らは信頼する大切な友人だから、紹介したいんだ」
「……お友達」

エヴァンはくまを掲げて、ジェシーへと見せた。
するとふっと笑みが戻り、エヴァンもつられて微笑んだ。

「そう。お友達だ。だから。不安にならなくていいよ」

最後のその一言で、エヴァンは彼の気遣いを察した。
真っ直ぐに注がれる眼差しを受けて聞けば、その言葉の裏に込められた意図に気付ける。
彼は、エヴァンにまた捨てられるかもしれないという不安が生まれることを懸念しているのだ。
友人に預け、任せる機会が増えてくれば、自然とそのような不安が生まれるとエヴァン自身も思う。
エヴァンは何も出来ない役立たずで、負担なのは明白だから。
厄介に思い、追い出したくなるのは予想がつく。
ジェシーにはそんなことはしてほしくないと思っていたけれど、実際に彼はこうして言葉にしてくれた。

エヴァンは手をのばし、ジェシーの指を握った。
そしてジェシーも、自身の気持ちをエヴァンが察したのだと悟った。

「大丈夫だよ。君がこわがることは決してしないからね」

けれども、二人はまだ何もかもすべてをわかりあっているわけではなかった。


ジェシーが友人を出迎えに行った後、明るい女性の声がリビングのエヴァンのもとへも響いてきた。
エヴァンは反射的に立ち上がり、身をかたくして待ち構えた。

「あら!あなたね?」

彼女は現れるなり満面の笑みをエヴァンへ向けた。
背が高く、ほどよく肉のついたキャシーはエヴァンよりよほどたくましかった。

「まぁ、可愛い子じゃなーい!」

キャシーは、ダレルが余分に距離をとって足を止めたところでは止まらなかった。
ジェシーとダレルが反応するよりも、その接近は早かった。

「よろしくね、エヴァン」

両腕を広げた彼女がハグする気だと気付いた彼らは、あっと声を上げた。
エヴァンは背筋の震えを感じ後ずさるが、社交的な彼女は悪気無く歩み寄った。

「大丈夫よ、こわがらないで?」

エヴァンはソファーへ座らせたくまに目を走らせたが、咄嗟に手をのばしても届かない距離にあった。

「キャシー!待って!」

ジェシーが彼女の腕をとらえかけ、空を切る。

「仲良くしましょ?」
「キャシー!」

続いてダレルも制止する。

エヴァンは脅えてキッチンへ逃げ込むが、追跡が終わらないことで追い詰められたと悟る。
腰を打ち付けてもう後が無いと知った時、エヴァンは恐怖ですとんと腰を抜かした。
キャシーはそれを目の当たりにしたらびっくりしてしまい、口を開けて友人と婚約者を見やる。

エヴァンは小さく丸くなり、がたがたと震える手で頭を抱えている。
声を殺そうとしていたが、啜り泣いているのがわかった。
ダレルが彼女を連れていくと、ジェシーはエヴァンの前に膝をついて優しく語りかけて慰めた。

エヴァンがリビングへ戻ると、キャシーは自分の失態を反省していた。

「ごめんなさい。繊細な子だとは聞いていたんだけど……。私ったら本当にガサツで……」

ジェシーの背中にしがみついたまま、そこから顔を出して落ち込むキャシーを窺う。

「あ、あの……ぼく……。ごめんなさい」

エヴァンも悪いとわかっていた。
驚いたとはいえ、ジェシーの大切なお友達に失礼な態度をとって傷付けてしまった。

「いいえ。私が悪いんだから、あなたは謝らないで?」

くまを渡されてジェシーの背中から手を放すと、エヴァンはその背の陰からくまの手をのばした。
仲直りの合図だと察したキャシーは、快くそのテディベアの手をとり、笑顔で握手をした。

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あきゅろす。
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