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シリーズ・短篇

まもなくルースを拘束したとの知らせが入り、エヴァンは一度警察へ行くこととなった。
ジェシーはクッションを指して“落ち着くならそれを持っていってもいい”と言ったが、エヴァンはそれよりジェシーにしがみつくのを選んだ。

エヴァンは脅え通しで、終始ジェシーの背にくっついて隠れていた。
途中で泣き出してしまうこともあったが、証拠に体の傷を撮影されるのにも耐えた。

「ジェシー…っ、帰るぅ。おうち、帰る…!」
「よしよし、がんばったね。帰ろう」

痩せた白い体には、沢山のアザや傷跡があった。
手足には拘束した際についたと思われるものも残っていた。
それが痛々しくて、ジェシーは脅えたエヴァンを抱き締めながら涙を堪えていた。

現場で一度話してはいたが、ジェシーとダレルも改めて知っている限りの事を証言した後でそれぞれ帰宅した。


エヴァンは、ベランダに面した大きな窓のある一室を与えられた。
昼間だと光が沢山入って明るく開放的な部屋だ。

色々あってエヴァンには負担が大きかった一日だったことを思うと一人で寝かせるのは心配だったが、何事も無く寝入ったようだったのでジェシーは安心した。

深夜に強くなった風が窓を揺らし、エヴァンはびくりと肩を揺らして睡眠から一気に目覚めた。
伯父さん達が来たのかと思い飛び起きたのだが、彼らはもう来られないのだと思い出す。
そしてエヴァンは既に彼らに知られていない安全な場所に居る。
理屈で納得はしても、心臓はまだばくばくと騒いだままだ。
それに窓ががたがたと揺れる度にびくついてしまう。
しばらく寝ようと試みたが、エヴァンは遂に耐えきれずにベッドを出た。


「……ジェシー」

涙ぐんで、すんっと鼻をすする。
二度呼んで、こんな時間に……と迷惑がられたら。叱られたら。と思い至り、口をつぐんだ。
すると恐怖に寂しさが加わり、エヴァンはぐすぐすと泣きじゃくりだした。
その時、目の前のドアが開いた。かと思うと、ぽすんと温もりに包まれていた。

「エヴァン、どうしたの?こわい夢でも見たかな?」

彼が怒らなかった安堵と、抱き締めてくれた嬉しさがエヴァンを落ち着かせた。
そしてぎゅっとしがみつく。

「風で窓が動くの。ぼく、おじさん達が来たと思って……」
「そうか。びっくりしたんだね。おいで。大丈夫だよ。おじさん達はもう捕まったからね?」

ジェシーは自室へエヴァンを招き入れ、子供をあやす様に穏やかに慰めた。

落ち着いたようでもまだしがみついているエヴァンをそのままにして、ジェシーは優しく片手では背を撫で、もう片方では頭を撫でていた。
それがとても心地よくて、彼を離したくない気持ちにさせた。
彼を一目見てとてもキレイな子だとときめいてしまったのは、伯父さん達が彼にした行為を思うと自制すべき感情だと重々わかっている。
けれど。それでも。
こうして抱き締めていると、彼に対して負う責任以上に、それが膨れ上がってきてしまう。
親戚として抱く愛しさ以上に、もっと深い愛情を。

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あきゅろす。
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