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シリーズ・短篇

白い外壁のアパートメントは、室内まで白一色だった。
物が少なく、リビングにはローソファーと、敷物の上に小さなテーブルが置かれてあるだけだ。

何かにしがみついて隠れていないと不安そうなエヴァンに、ジェシーはソファーの上のクッションを渡した。
するとエヴァンはそれを抱え、ソファーに足を上げて小さく丸くなった。

「エヴァン。よく聞いて。君に大切な話があるんだ」

ジェシーと、少し距離をおいて立っているダレルを交互に見やり、戸惑った表情を見せながらもエヴァンは頷いた。

「おじさん達は今日から少し帰ってこられなくなる。悪い事をして、警察に連れていかれたからだ。だからエヴァンは、これから僕の家で一緒に暮らすんだよ?必要な荷物があれば後で許可をもらっておじさんちから持ってきてあげよう。とりあえずここで生活するのに準備はしておいたけど、僕も引っ越したばかりだから、要るものがあったら言って?少しずつ揃えていこう」

エヴァンは口を開いたが、何から聞いていいかわからなくて結局諦めてしまった。
混乱してるかもしれないと思ったが、ジェシーは話を先へ進めた。
慎重に、反応を気にしながら。

「おじさんとルースは、エヴァンに何をしてた?」

二人が答えを期待しているのはわかったが、エヴァンはそれをなかなか口にできなかった。
それに焦れたダレルが急かす。

「あいつらは君をずっとあの家に閉じ込めてたんだろう?それだけでも十分逮捕されるべきだが、それだけじゃなさそうだ。だろう?」

エヴァンが問い詰めるような強い口調にひるんだのを見て、ジェシーは友人の名を呼んでいさめた。
が、救出を手伝った友人はあくまで優しさと正義感から続けた。

「酷い目にあったんだろう?それも何年も。なら、あいつらに相応の罰を与えてやろうと思わないか?言ってやれよ。あいつらは人間じゃないって」
「ダレル!急ぎすぎだ!待ってやってくれ。こわがってる」

エヴァンはクッションに顔を埋め、震えて涙をこぼしていた。
その背をジェシーが優しくぽんぽんと叩く。

「エヴァン?いいよ、無理しなくて。ゆっくりでいいから、ね?」

ジェシーはそこで少し休憩を入れることにした。
エヴァンにオレンジジュースを出して、一旦核心からは離れる。

「そうだ。エヴァンには先にしなきゃならない話があったね」

グラスを両手で抱えてジュースを飲むエヴァンを眺めて、ジェシーは穏やかに語った。

「血は繋がってないけど、エヴァンと僕は親戚なんだよ」

丸くなった目が、ジェシーとダレルに本当?と聞いていた。

「だから僕はずっと、エヴァンとエヴァンのママのことを知ってた。ずっと心配してたんだよ。君の行方がはっきりしなくなってから、捜してたんだ」

ジェシーの度重なる追及に対し、カインとルース親子ははぐらかして言い逃れてきた。
暴力が酷かったという実の父親が迎えに来たとなれば問題だし、また何処に預けたそこに預けたとなればちゃんとした預け先か知る必要がある。
そうしてやっと聞き出しても本人は一向に見つからず、問い詰めると激昂して話にもならなくなった。
ジェシーが家に入れるようになったのはやっとここ最近のことだ。

「エヴァンが物音を立ててくれなきゃ、あの時君を助けられなかった。勇気ある行動だったよ。だけど大丈夫だったかい?痛かったろう。何処にもケガはない?」

その話を聞いて、エヴァンはやっぱりあれは自分がやったのかもしれないとショックを受けた。
ガラスが割れれば何事だと騒ぎになるだろう。
そして同時にもたらす意味をも悟る。

「ぼく、知らない。お客さんが来たから、隠れて話を聞いてたの。そしたらろうかに寝てて……。ぼく、こわくて……逃げたの」

ジェシーとダレルは目配せをしてから、再びエヴァンへ目を向けた。
ジェシーは悲しそうに。ダレルは戸惑いながら。

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