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シリーズ・短篇

「クリスさんがプライベートで色んな方をお相手してるなんて想像できないわ。こんなに感じのいい方なのに。ああ、だから皆さんクリスさんに惹かれてしまうのね。納得できました」

彼女の祖父はますます顔をしかめ、母親は彼女の発言にひやひやして背後で落ち着かない様子だ。
けれど言われたクリスは一切動じず、さわやかに笑みを浮かべたままだ。
無邪気な彼女が、悪意を持って言っているのではないとわかっているからだ。

「僕は、カウンセラーみたいなものなんですよ」
「カウンセラー?」

もちろん快楽のために関係を繋いでいるのは否定しない。
良く言い過ぎなところもあるだろう。
けれど、それも真実の一面である。

「誰かの足りないものを補って、悩みを聞いて支えになって。そして、必要な時は僕も相手にそうしてもらう」

ただし少女にステキね!とそれを美化されて感心されても困るので、別の一面も隠したりしない。

「当然、人が顔を歪めて蔑むような事も僕はしてますよ?感じがよく見えるのも罠かもしれませんので、騙されないようお気をつけて」

にっこりと甘い微笑みを浮かべて。

この好感を利用していると自覚してるから、純白なお姫様に危険だと警告を出す。
うまく騙されてしまったりしないで。
面白そうだなんて思わないで。

それは親切心ばかりではない。
自分を必要としない相手に手をのばして、一方的に旨みを吸い上げるのは好きじゃないのだ。
相手にもこの関係を繋ぐ理由を半分負担してもらわねば。
遊ばれてると被害者ぶられて面倒なことになったら興醒めだ。

これは共存であり、共犯なのだ。
クリスは、自分が確かに悪い男だと自覚している。

少女は冗談だと思ってくすくす笑ったが、少女が立つ安全域の内から出ようとする気配は感じられなくて、クリスは内心でほっとしていた。


「いつまで低俗な人間と下劣な付き合いを続けるのと思っていたが、諦めた方がよさそうだ」

冷たく、鋭利な眼光と言葉が上から突き刺さる。
少女には見抜かれずに済んだ醜悪な部分が義兄には見抜かれていたのだと悟り、クリスはギルバートから視線をそらした。

お前は救いようのない人間だ、と。
そう言われたのだ。

誰に何て言われたって大概はそう大きく動揺したりしないが、クリスも人の子なので、家族に言われると弱かった。
特にギルバート相手には。
しかし、彼はとことんクリスを見下げ、嫌悪していた。
それを少しさみしく感じるほどには、ギルバートを好きだと思っているのに。
彼はそれすらも迷惑だと思っているようだった。

いっそ兄弟でなければ色気を使って少しくらいなびかないか楽しんでもいいかもしれないが、あいにく好みのタイプではない。
それにそもそも兄弟でなければ、クリスも彼に期待はしなかったろう。

一方的になぶられるように、ただ彼の言動に翻弄されるだけだ。

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あきゅろす。
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