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シリーズ・短篇

享楽的な生活を送るために必要なものには恵まれていた。
家柄、財産、容姿。
そして愛人の息子という立場、風評が結果的に屈折を生み、享楽主義者を形成するに至った。

老舗デパートの創業家の次男として出席するパーティは、刺激と快楽をさがしに行く場だ。
快楽にふけるのを目的とした関係を繋ぐ。
それを楽しめる美しい子なら、女でも男でも歓迎だった。

クリストフ・カージュといえば、愛人の子で享楽主義者だと裏では皆嘲笑し軽蔑している。
しかしそれでも彼との繋がりを求める者は確かに存在する。

クローディアは自分が上になって動くのが好きな女性だ。
クリスを支配したがって、クリスが行為中に能動的になるのを嫌う。
嗜虐的な趣味は無いが、自身の言動によって反応する様を見て楽しむのが好きなのだ。
グラマラスで色っぽい女性だが、中身はサバサバして面倒見のいい人だ。

メロディはマゾヒスティックな傾向のある女性だ。
あいにくクリスには人を傷付け痛めつけて悦ぶ心はない。
快楽で繋がる関係とはいえ、クリスは彼女達、彼らをそれぞれ愛している。
欲望を処理するだけの冷たい関係ではない。
互いに利害があって、精神的な慰めにもなっているのだ。
とはいえ、クリスは快楽に従順だった。
クリスが反応をうかがいながら躊躇いがちに些細な痛みを与えると、焦らされるのがたまらないようで彼女は盛大に悦びを見せる。
それはクリスにも快楽を与えた。

ユリは幼い頃から同性に興味があることを悩み、その秘密を抱えて苦しんできた男の子だった。
クリスが男も相手にすると知って救いを求めてきた子だった。
クリスはそれが罪深い事ではないと楽にしてあげて、快楽を得る手解きをしてやった。
彼は真面目で純粋な子だが、それ故に体で得る快楽と純愛は別だと考えている。
運命の王子様と出逢う物語の様な美しい恋に憧れている。

クリスはそれぞれの相手を愛しているけれど、恋愛を楽しむつもりはない。
人を傷つけるのが嫌いだからだ。
君だけだと嘘をつきながら、恋心をもてあそぶことはしない。
心を動かさない割り切った子を選び、互いの利益のために結ばれる関係を楽しむ。
淫らな関係を享受するクリスを、人はモラルに欠ける下劣な人種だと言うが、クリスにしてみれば恋愛ごっこで遊ぶ者達と何ら変わらない。
それだけクリスにとっては正しく、後ろめたく思うことではない。
だからどんな悪し様に言われようと関係ない。
これが、クリスという人間だった。

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