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シリーズ・短篇

「で?どうした」
「あの、相談したい事があって」

そんな事と笑われるかもしれない。
くだらないと怒られるかもしれない。
けれど。それでも。
あった事、感じた事を話した。
そうできるのは、藤堂さん以外に居ないから。

「篠田達に、そのダチがうざいって言え」
「えっ」

そんな事を言ったら、不快な思いをさせないだろうか。

「そいつらがお前のダチなら、俺のダチに迷惑かけんなって言ってくれるだろ。それでもし相手を庇ってお前を責めるようなら、そいつらごと切っちまっていい」

そんな我儘を言って、挙げ句切ってしまったら、以前とちっとも変わらない。

「お前が困ってるって知ってるのにガツガツ絡んでくるのが迷惑なんだろ?我慢するな。お前は今までの行動を改めようとして気にしすぎなんだ。本当のダチならお前の気持ちに配慮してくれるはずだ」

篠田君達は、僕の事を考えてくれた。
傷付けないかと考えないで、それを信じるべきなのかもしれない。

「友情を知って育むのもいい。だが、それで切れるようなそんな薄っぺらなもんでこれが友情だと思ってほしくない」

本物を選べ。と藤堂さんは言った。
強引で早急な人だけれど、率直でわかりやすいのが楽だ。

「そうなっても、あまり落ち込むなよ」

腰を抱いていた手がぎゅっと寄り掛からせてくれて、その優しさに甘えた。

「藤堂さんに相談してよかった」

そう独り言ちるように言うと、ふっと頭上で笑いがもれた。

「まだ俺に話しただけだろ」
「ううん、それでも……」

問題が解決したわけじゃないが、それでもずっと気持ちが楽になった。
すると思考も軽くなる。
親しい人間ができたのは、そもそも藤堂さんあっての事なのだ。

「僕、藤堂さんが居れば寂しくないです」

いい子だと褒めてくれたけれど、お世辞じゃなく本心だとわかってほしかった。

「本当です。藤堂さんが居ないなら、もう何も意味が無くなりますから」

彼が居るから心を持てた。
人に目を向けられた。
もし居なくなってしまったら、僕はもう一度心無いものになるだろう。
虚しい人間と自覚しているだけに、悲しみはもっと大きくなる。
愛を知ってしまっただけに、絶望はより深くなる。

「お前は本当に可愛い奴だ」

この心地好い腕の中を、幸せを逃したくないと思った。

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