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Lovely Prince

添い寝したのが発覚してから、里久は千草と目が合う度に赤面しては慌ててうつむくのを繰り返している。
昼食時にどうしたんだと聞いたのをきっかけに、黒川にもその件が知られた。
うなされたのだから仕方ないと自分を納得させようとしているが、明らかに動揺は隠せていない。

「寝不足で千草がしんどい思いするよりよかったじゃねーか。ぐっすり寝られたって事は、手を出されなかったって事でもあるんだしさぁ」
「わかってる!わかってるから、何度も“手を出す”って言うなっ」

誠の励ましは黒川には追い討ちになっている。

「逆に君ら、冷静になって考えてみなさいよ。恐ろしい悪夢を見て怯えて寝られないって言ってる子を目の前にして、自分の欲求を優先しようという気になるかね?」

普段ふざけてばかりの京にぴしりと正論をぶつけられ、黒川はぐっと黙りこむ。

「そこで“なる”って答えるヤツは俺が絶対に千草に近づけない」

低い声で真剣に告げられた京の決意に、聞き耳を立てているだけの周囲にピリッと緊張感がはしった。

「うーわ、こーわっ」

誠は笑みをひきつらせ、黒川は素直に冷静じゃなかったと謝った。同じベッドで寝た事ばかりに気をとられ、うなされたという事実をつい忘れそうになっていた。
これだけ自分の話題になっているのに、千草は一切感情を動かさず食事を進めている。

「いい子だねぇ、千草は。余計な事に気をとられずに心を乱さない。さすが!」

一転して甘い顔を見せる京は、にこにこと嬉しそうに千草を見つめる。
千草はそれでも顔色を変えず、一瞥もしない。

「杏仁豆腐おいし?俺のもあげよっか?あっ、あーんしてあげるよ」

デレデレとだらしない京にちらりと目を合わせ、千草は冷ややかに拒否する空気を放つ。声には出していないのに、京は正しくその意思を察し口をとがらせた。

「なぁ〜んだぁ。じゃあ千草、この後どうする?何も予定が無いんなら、二人で誰にもジャマされないところに行く?皆のご期待にこたえてイチャイチャするのはどう?」

黒川はぎょっとして、咄嗟に千草がどんな反応をするのか見た。そして、ぽかんと口を開ける破目になった。
冷たく受け流すでも嫌そうに顔をしかめるでもなく、くすくすと笑っていたからだ。

「俺にそんな気がなければ、しないんだろ?」
「もちろん。だけど俺には、嫌がってるようには見えないなぁ〜」
「残念。都合のいい解釈だな」

ふんわりと頬をゆるませ、上目で見つめ返すその表情は、他人から見てもまんざらでもないように映る。
恋人のたわむれを、やんわりとかわすかのように。もう既に十分イチャイチャして見えている。

「京に更に残念なお知らせ。また千草に“お会いしたい”子達が来てるってよー」

伝言を受けた誠が言うと、千草はふっと小さく笑った。千草と二人きりで過ごす計画が潰れて悔しがる京の姿が想像できたからだが、現実は違った。

「なら千草、しょうがないから皆の前でイチャイチャする?」
「おいっ」

思わず黒川が反応してしまうが、千草はいたって冷静だった。

「殴られる覚悟はあるか?」
「殴られる事より、千草を本気で怒らせる事の方が怖いです。ごめんなさい」

おどけて反省してみせる京を見て、千草はまたくすりと笑う。



わぁっと上がる歓声に面食らった千草は、思わず後ずさった。
本人に許可を得た事が後押しとなり、前回より人数が増えている。

「わぁ、すげー」

興味本意で覗きに来た誠はその人数に驚き、里久と黒川も圧倒されている。
「お話ししたい」と言う少年達の反応は様々で、黒川は彼らに親近感を覚え、誠は面白がった。結果、彼らもついてくる事になった。

図書館の前の広場。
千草を囲むように座った少年達は、目を輝かせ、頬を染め、または言葉を失っている。
ただ、皆視線だけは釘付けで、表情が動かず声も発しないその人を飽きずに見つめ続けた。

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あきゅろす。
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