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Lovely Prince

「お二人は互いのどんなところが好きなんですか?」
「どこを好きになったんですか?」
「いつ好きになったんですか?」

中学生達の中では、二人が付き合っているのは常識になっているのかと思わせる質問が飛び出す。
戸惑い、苦笑するのは誠達の方で、本人達はそこにいちいち反応しない。受け入れているのか、聞き流しているだけなのか、見ているだけでははかれない。

「初めて会った時の事を、すごくよく覚えてるんだ。何だろう。映画みたいに、何度思い出しても鮮明に浮かんでくる。色が白くて、華奢で……上品でおとなしそうな、綺麗な男の子だなって思った」

思い出しながら語る口調は穏やかで、いつものおふざけなど何処にもない。
少年達は、京の話に感激して耳を傾けている。

「千草がにこっと笑った時、この子は俺が守ってあげなきゃならないと思った。もっと小柄な子とか、か弱い女の子達に対しては一度も思った事がないのに」

一目惚れですね。と言う中学生の言葉を、京は笑顔で肯定した。

「千草は綺麗で可愛いけど、見た目で好きになったわけじゃない。って、言ったら信じる?もし同じ見た目の別人が居たとしたら、俺はその人を好きにはならないと思う。千草だから綺麗だって思うし、好きだと思える。千草じゃなきゃ意味ないんだ。だからどんなに綺麗で、可愛い人が現れたとしても、俺の気持ちが移る事は無い」

少年達は理想的な恋人を見るように、憧れの目で京を見ている。

「千草は、俺の見た目を好きになったの?」

京がおどけて顔を覗きこむと、千草はくすくす笑って「さぁね」と流してごまかした。
それでも期待に満ちた少年達の眼差しは、千草に話す事を求めている。千草はその圧力の居心地の悪さに観念し、そっと溜息をついた。

「第一印象どころか、ここで再会するまでの京の事を覚えてない。だから俺にとっては、二度目の出会いが記憶にある第一印象になる」

感情の見えない静かなトーンと表情が戻ると、少年達に緊張感が生まれる。加えて、記憶の喪失という深刻な事情がそれぞれの脳裏によぎった。

「京の印象なんて、きっと皆と変わらない。だから、孤立してる俺なんかに根気強く構ってくれるのが不思議でならなかった。その上、黙って俺の動揺やパニックに寄り添って、対処してくれる。そんな事ができるのは貴重で、“特別”な人だ」

千草が劣等感を抱いているというのは、少年達にとっては意外だった。

「京から過去の話を聞いて、すごく納得した。俺は、京がより“特別”だったんだと知った。同時に京にとっても自分が“特別”だったと知って、それもすごく嬉しかった。まぁ、“特別”の意味に相違はあるけど」
「おやぁ?そ〜お?」

京が最後の一言を疑って茶化す。くすくすと千草を可愛らしく笑わせる事ができるのは彼だけだと、誰もが思った。

「何処が?とか何が?なんて理由はない。俺にとって京はただ“特別”というだけだ。昔も今も」

千草は照れずに、本音を率直に打ち明ける。

「いつでも俺を悪夢から助けてくれる。そうして寄り添って支えてくれる事を、恥じる事はない。これから俺の“特別”の意味が変わったとしても、それは同じだ。誰に何て言われようが、二人の関係を恥じたりしない」

少年達は感動して、ますます二人を理想のカップルとして尊敬と憧れを強めた。


中学生達と別れた後、里久は一人しゅんと項垂れて、千草と京に謝った。
二人がとても親しげだから、付き合ってないのが不思議に感じて安易に“何故くっつかないのか?”と口にしていた。それが実際に親密な様子を見聞きしたら、急に照れ臭くなって言えなくなったのだ。
けれど、二人が堂々と中学生達に話す様子を見ていて気付いたという。

「勝手に人目を気にしたり、恥ずかしいと思っちゃってごめんね」

千草は目を丸くして、ことんと首を傾げた。何を謝られているのか理解していなさそうな様子を見て、京は吹き出して里久に示した。

「ほら、千草は全然ピンときてないから。真面目に考えなくていいよ」
「そーだぞ。それに里久は添い寝話とかこいつらのイチャイチャで照れるのがウブで可愛いんじゃねーか。さてはお前も千草と同じで、自分の魅力に無自覚なタイプか!?」

誠のからかいに、黒川も頷いてみせる。
里久はまた赤面し、皆の笑いを誘った。

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