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Lovely Prince

その日千草は、緊張して寮の部屋で待っていた。
例の中学生と話しに行くと聞いた時は心配だったが、暴力的な事はしないと信じている。
千草がそれを恐れ、嫌うからというのもそうだが、それでは問題は解決しないと知ってるからだ。

京が帰ってくると、報告してくれるまでじっと待った。

「大丈夫。わかってもらったから」

どうやって?なんて聞かなくても、それだけで安心できた。
大きな温もりが包んでくれるだけで、守られてる事を実感できる。

「千草と付き合ってくって事は、こういう事なんだな」

擦り寄った胸に響いた低音は、そっと独り言ちた音だった。
面倒な恋人だと思われたんじゃ?と不安と恐怖がわいて、指先が震えそうになる。
けれど千草はそれを振り払うように、ぎゅっと手を握り締めて声が震えないよう腹に力をこめた。

いつも泣いてすがるばかりだった。
独りにしないで。行かないで。と、願い。
守ってもらうばかりだった。

「京が嫌になっても、どっちにしろ俺は京無しじゃ生きられない」
「ちが…!」

首を振って、千草は続けた。

「だから京には、俺の事で苦痛を感じてほしくない。負担になりたくない。それはきっと、俺が強くなることで叶うよね」

京のお蔭で、京に支えられてここまできたのだ。
だから今度は、自分が京を支えられるようになりたい。
互いに支えあい、癒しあう関係に。

「千草……」

肩に頭が乗せられ、その広い背中に腕をまわす。
そうしてそっと撫で、愛しい体温を感じる。
守られるばかりではいられないし、いたくない。

「俺が、守ってあげる」

また、いつもとは逆の光景になっていたが、それは二人の成長の証だった。
京に癒され、心に余裕が出てきた千草だから、京も弱さを許せるようになった。


待ち伏せをしたりせず、昼時に堂々と食堂に訪ねてきてのは評価すべきだと千草は思った。
追い返そうか?と言う友人達に首を振り、自分が行くと言う恋人にも断って一人で向かう。
訪問者へ向けた目は鋭く、怒りに満ちていて、誠でもおっと目を丸くした。

場所を移そうとする中学生に首を振り、千草はガラス越しに食堂から見えるところに残った。
怒気を隠さず、京の言った事は本当か確かめに来た少年を冷たく突き放す。

「君は何を見てたんだ」

少年は言葉を失った。

「俺は京でしか満たされない。京としか生きられない」

語る口調は静かだが、唸る様な迫力が這って少年を飲み込む。

「俺に君は必要ない」

京のために自分を守るという事はこういう事なのだと、見に染みてその意味を実感した。


席へ戻ったきた千草は、ふわりと微笑を恋人へ向けた。

「もう大丈夫だよ」

京を守るためなら。
京と過ごしていくためなら、より強くなっていける。

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あきゅろす。
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